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束の間 13
「どうしても駄目?」
「ダメに決まってるだろう? と言うかそんなのウケると思えないんだけど。僕と草薙君がやるより、ナギと東海がやった方が良くないか?」
上目遣いで見つめてくるナギの頭を撫でながらそう言えば、なんで俺が……。と不満そうに唇を尖らせて文句を言う。
いやいや、その言葉そっくりそのまま返してやりたい。
「ナギ君はともかく、はるみんは顔出しNGだもん。だから駄目なの」
「いや、僕だってOKした覚えは……」
「ナギ君の配信で顏出ちゃってるでしょう?」
美月の言葉に返す言葉が無くなってしまう。アレはたまたま生配信中の事故だったわけで、けして好きで顔出ししたわけでは無い。
「おはようございます。みんなで集まって何の話してるんですか?」
「おはよう。草薙君。キミのお姉さんから女装対決しろと言われて困っているんだ」
タイミング良くやって来た弓弦に渡りに船とばかりに事情を説明すると、彼は眉間に深いシワを寄せた。
「……まだ言ってたんですか。懲りませんね」
「……まったくだ」
はぁ……と二人揃ってため息を吐く。
「だってぇ、視聴者からやって欲しい企画を募集してたんだけど、やって欲しいって意見が結構多かったのよ。二人とも美形だし、絶対映えると思うのよねぇ」
「物好きだね。女装なんて似合わないでしょ」
「私もそう思います」
良かった。結弦がまともな考えで。ナギがやるなら一番前で写真を撮ってみたいと思うが、自分がやるとなると話は別だ。
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