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勝負の行方 2
対する結弦の方はと言えば、こちらもスタッフ総出で弄繰り回され、見事な仕上がりになっている。
元々整った顔立ちをしているうえに、肌が白い為か薄らとファンデーションを塗られただけで女に見えるから不思議だ。
淡い茶色の髪を緩くふわっと捲いて、オフホワイトのワンピースに身を包み、上からピンクのカーディガンを羽織っているその姿はどこから見ても清楚系女子にしか見えない。
「やばっ、ちょっとちょっと! 二人とも可愛くない!?」
喜びの声を上げる美月に、他の女性スタッフたちも満足そうに頷く。
「いいじゃない二人とも。凄い! これは期待以上かも」
「……それは素直に喜んでいいのかわからないよ」
溜息交じりに呟いた言葉に、結弦がウンウンと激しく首を振る。
「わかります。その気持ち。本当に不本意です」
「そう言わないの。ゆづ、すっごく似合ってるわよ」
「……」
嬉しそうに笑う美月に、結弦が複雑そうな表情を浮かべ押し黙る。人気絶頂期のイケメン俳優を女装させるだなんて、そんなことが出来るのは姉である美月ぐらいだろう。
「じゃあ、早速みんなにお披露目と行きましょうか。きっとみんなびっくりするんじゃないかな」
美月の言葉に、蓮と結弦が顔を強張らせる。
今この瞬間だけでも恥ずかしいというのに、これ以上恥の上塗りをする羽目になるとは……。
「たく、何が悲しくて好きな奴の前でこんな格好を晒さなければいけないんだ」
「全くです。姉さんの趣味を疑いますよ」
文句を言いながらも大人しくついていくのは、ここで抵抗したところで無駄だという事がわかっているからだ。
それにしても……。
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