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勝負の行方 3

「へぇ、草薙君にも好きな子がいたのか」 「っ! ……何の事だか分りかねます。さっきのは言葉の綾と言うか……」 「照れなくても大丈夫だよ。僕が協力出来ることがあれば何でもするからね」 「だから違うって言ってるでしょう!?」 顔を真っ赤にして否定する結弦に、蓮が思わずクスッと笑いを漏らすと、結弦がキッと睨んできた。 「……何か?」 「ううん。なんでも」 ヤバい、面白い。もっと弄って相手が誰なのかを追求してやりたい。そんな悪戯心を必死に抑えながら歩いていると、 「二人ともいつの間に仲良くなったの?」と、言う美月の呑気な声が聞こえてきて、結弦があからさまに嫌そうな顔をした。 「流石にそんな顔されると傷付くなぁ……。で? 結弦君の好きな子は誰なのかな?」 「しつこいですよ」 ツンとした態度を取る結弦に、蓮ますます笑みを深くする。 そうこうしているうちにスタジオに辿り着き、中に入ると、待機していたナギたちの視線が一斉にこちらを向いた。 「お待たせ―。美女二人連れて来たわよ」 「美女って……」 「どう考えても無理がありますよ……」 げんなりとする二人とは対照的に、ナギたちは口々に「おおっ!」と歓声を上げて駆け寄ってくる。 「やば! めっちゃ可愛くない!? お兄さん似合ってるよ!」 「草薙君は予想できたけど、オッサンも案外似合ってんじゃん。馬子にも衣装って感じ?」  「……ハハッ」 口々に似合うと言われたってちっとも嬉しくない。それなのにナギがあまりにも楽しげに「可愛い!」と連呼するから、恥ずかしがっている自分がバカみたいに思えて来る。

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