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OFFの日 13
聞こえるのは波の音と、時折すぐ側の国道を通る車の音だけ。空を見上げれば、満天の星と月の光。
真っ暗な砂浜に人工的な光は無く、砂浜と海面の境すらわからない。
「流石に寒いな」
「そりゃまぁ、真冬だし?」
クスクス笑い合いながら吐き出す息は白く、凍りそうだ。繋いだ手だけがじんわりと暖かい。
「あ……、あそこにイルカみたいなものがいる!」
「え? どこっ?」
蓮の言葉に反応し辺りを見渡そうとするナギの顎を掴んで、そのまま軽くキスをする。
「冗談だよ。イルカなんてこんな暗いのに見えるわけ無いだろ?」
「~~~ッ」
騙されたと気付いて何も言えなくなったナギの頬に手を添えて、蓮は再びキスを仕掛ける。
ゆっくりと唇を舐めてから、少し強引に舌を割り入れると、ナギは一瞬だけ身体を強ばらせたものの、おずおずと口を開いて蓮を受け入れた。
「……っふ……」
湿った音が響き、長い睫毛が小さく震える。角度を変えて貪るように深く口づける。
歯列をなぞり、上顎を舐め上げるとナギの身体が震えた。
「お兄さん……此処、外……だから……っ」
「大丈夫。誰も見てないよ」
頬を赤くして潤んだ瞳で見つめられ、吐息の甘さにくらくらする。
「んっ……ッ」
誰もいないのをいい事に、そのままキスの雨を降らせる。額、瞼、頬、そして唇へと。
ナギもその気になって来たのか抵抗する事なくそれを受け入れ、腕を蓮の首に回して身を委ねる。
キスの合間に漏れる吐息と、静かな波の音が耳を犯す。
「んぅ……っ、お兄……さん」
甘えた声が蓮の欲望を刺激する。このまま砂浜で押し倒してしまいたい衝動に駆られるが、いくら何でもそれは流石にマズいだろう。
かと言って、一度火のついた欲望を抑えるのも中々に難しい。
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