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OFFの日 12

「シーッ、静かに。あの二人に気付かれたら困るだろ?」 「ナギまで……なにちゃっかり参加してるんだ」 「だってぇ……気になったんだもん」 確かにその気持ちはわかる。わかるのだが、もしも見付かった場合を考えると少々厄介だ。 「そんなに雪之丞たち気になるのかい? 僕が居るのに……」 少し拗ねた口調でそう言うと、ナギはハッとした顔をする。 「ごめっ……そんなつもりじゃなかったんだ」 申し訳なさそうに目を伏せるナギは可愛い。こんな風に言われてしまったら、怒るに怒れないではないか。 「……でたよバカップル」 「蓮さんって、案外したたかよねぇ。弓弦にも見習ってほしいわ」 呆れたような、それでいて揶揄うような美月と東海の言葉が聞こえて来たが、否定は出来ない。 蓮はふふっと笑いながら、俯くナギの頬を指で撫でた。 *** 食事をして外に出ると、ライトアップされた海沿いの公園の方へ足を向けた。 昼間は大勢の観光客で賑わうこの場所も、今は家族連れやカップルがまばらにいるだけだ。 「あ、ほら……ここから下に降りられるようになってるみたいだよお兄さん」 「へぇ、此処から直接海に出れるのか。下りてみようか」 心地よい海風を感じながら、蓮はナギの手を取ってゆっくりと歩きだす。 公園の外灯からの僅かな光が周囲を頼りなく照らしている。 だが、階段を降り切ってしまえばそこから先は足元すら覚束ない程の暗闇が砂浜に広がっている。 周囲には人の気配はない。まるでこの世には自分たちしか存在していないのでは? と、錯覚を覚える程に静まり返った空間。 頭上に煌めく星々は手を伸ばせば掴めるのではないかと思う程に近く感じる。 穏やかな波の音と潮の香りが二人を包み、まるで世界にたった二人きり取り残されたよう。 柔らかい砂地に足を取られないよう、階段の横を塀に沿って歩く。油断していると柔らかな砂地に足を取られそうで、はぐれてしまわないようにナギの手をしっかりと握りながら歩いた。

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