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OFFの日 11
「あーもうっ、ゆづってば、男になんなさいよ! じれったいなぁ」
「!?」
突然、聞き慣れた声が何処からともなく聞こえてきて、思わず蓮とナギは顔を見合わせ辺りを見渡せば、弓弦達の席と、自分たちの中間位の位置でコソコソと二人の様子を伺う怪しい人影が二つ。
「ねぇ、あれって……」
「はるみんと草薙姉だね……」
二人とも、蓮とナギの存在には全く気付いていない様子で、物陰に隠れながらジっと弓弦達を見つめている。
「大丈夫だって。あれ、どうみたって両想いだろ」
「でも……ゆきりんがどう思ってるかわかんないし……」
「……覗き見とはあまり関心しないなぁ」
蓮は乾いた笑みを浮かべながら、そっと東海と美月の後姿に声を掛けた。
すると、二人はびくぅっ! と飛び上がらんばかりに身体を跳ねさせ、ギギギ……と壊れたロボットの様にこちらを振り返る。
「……あ、あはは……これは、えーっと」
「つか! アンタらなんでいるんだよっ!」
なんでと責められても困る。と言うか、それはコッチが聞きたいくらいだ。
「僕達は、デートに決まってるだろ。キミたちの場合はデート……って感じじゃなさそうだけど」
二人とも全身真っ黒な服を着て、同じような帽子を被り、わざと合わせたのか?と疑いたくなるくらい似た服装をしている。
まさか、尾行するために口裏を合わせたとか?
「ち、違うの! 今日、この近くでたまたまサバゲーの体験やってて、ガラス越しにゆづの姿が見えたからそれで……っ」
「へぇ~……サバゲー、ねぇ……」
「おいっ、余計な事言うなよクソ女!」
あたふたと慌てる二人の様子が可笑しくて、ついつい口元が緩んでしまう。
弓弦も雪之丞もまだ自分達には気が付いていない。折角のデートを楽しんでいるようだから、邪魔はしたくない。でも、気になるから覗いていた……と、言った所だろうか?
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