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OFFの日10

このまま家に戻るのも味気なくて、国道へ出てバスに乗り海沿いの町まで足を伸ばした。美しい夜景が見られると話題の観光スポットで、公園のすぐ近くには雑誌にもちょくちょく取り上げられる有名なレストランがある。お洒落な店内には静かなBGMが控えめに流れており、耳に心地いい。 「此処のパエリアが美味しいんだ」 どうしても一度ナギを連れて来たいと思っていた店がそこだった。 真夏の繁忙期には予約なしではまずは入れないこのレストランも、流石に冬のこの時期ではすんなりと入店する事が出来、海岸沿いを見渡せる席に通された。 「へぇ、綺麗だね……」 大きなガラス窓は広く取られており、そこからは夜の海を一望できる。ライトアップされた観覧車やビルの夜景はまるで宝石箱をひっくり返したかのように煌めいていた。 「どう? 気に入った?」 「うん。連れてきてくれてありがとう」 にっこりと微笑むナギを見て、蓮は満足げに頷く。 「喜んでもらえて嬉しいよ」 ナギの嬉しそうな顔を見ていると、つれて来てよかったと心の底から思う。 他愛もない話をしながらコース料理に舌鼓をうっていると、突然ナギがテーブルの下で蓮の足をつついた。 「ねぇ、あれ……」 「え?」 顎で指す先には、男性2人が向かい合って座っている。 一人はサングラス、もう一人はマスクをしているせいで、表情までは窺い知れないが、その背格好に見覚えがあった。 「もしかしなくても、あれって……ゆきりん達じゃない?」 変装しても、滲み出るイケメンオーラは隠せていない。周囲の女性客もチラチラと二人の様子を盗み見ているのが何となくわかって、思わず失笑が洩れる。 ただ、当の本人達はバレていないとでも思っているのか、それとも満更でもないと思っているのか、堂々と食事を続けている。 「こんなところで何やってんだろ……」 「さぁ……デート、とか?」 まさかこんな所で鉢合わせるなんて思ってもみなかったが、確かにデートスポットとしては雰囲気もいいし、海も見えるからムードはあるだろう。 自分もそのつもりでナギを誘ったのだ。チョイスとしては間違っていない。 「ねぇねぇ。あの二人、何処までの関係だと思う?」 「何処って、そりゃぁ……」 物凄くいい雰囲気だったとは思うが、何処まで? と言われるとよくわからない。 雪之丞はもちろんの事、弓弦も奥手な方だと勝手に思っていたが、昼に見た映画の中の彼はそんな要素は微塵も感じられなかった。 寧ろ、キスシーン一つで日本全国の女性をメロメロにしてしまうのだから、弓弦が本気を出せば雪之丞なんてあっという間に手の平で転がしてしまいそうだ。 目の前にいる二人はほんわかとした空気を醸し出していて、とてもそう言う関係には見えないが。

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