317 / 351

OFFの日 9

イルミネーションが灯された木々の中をゆっくり歩きながら、蓮達は帰路についていた。 右手にはしっかりとナギの手が握られている。 映画の余韻に浸っているのか、ナギは嬉しそうにニコニコしながら蓮の腕に縋りつき、時折思いついたように指を絡めてくる。 周囲が暗くて良かった。 きっと今の自分の顔はとんでもないことになっているに違いない。 「やっぱ、弓弦君ってさ……プロだなぁって思った。なんか、女の子たちが憧れるのわかった気がする……」 「そっか……」 「うん。演技だってわかってるのに俺までなんだかドキドキしちゃったし」 楽しそうに話すナギに悪気なんて無いのだろう。でも、何だかその言葉が面白くなくて蓮はつい素っ気ない返事をしてしまった。 「なんか……妬けるんだけど……」 「え?」 思わず出てしまった本音に、しまった! と口を塞ぐ。ナギはびっくりした様に目を見開いている。 「お兄さんって、結構独占欲強いよね」 「うっ……耳が痛い」 前々から自分でも気付いてはいた事だが、こうもはっきりと指摘されたら立つ瀬がない。 「でも、そう言うお兄さんもいいと思う。だって、それってつまり俺の事大好きって事じゃん?」 クスクス笑いながら見上げてくるナギは何処か嬉しそうで、あぁやっぱりこの子には敵わないなぁ。と、つくづく思った。 「……そう、だな。目に入れても痛くないし、いっその事監禁して僕だけしか見えないようにしてやりたいとか、考えてるし……」 「うっわ、それは流石に引く……」 「冗談だって」 「お兄さんの場合、冗談に聞こえないってば……」 ブツブツ文句を言っているが、それでも蓮の腕を離す気はないらしい。寧ろギュッとくっついて来る所が可愛らしい。 「そんなお兄さんも好きだけど……」 「何か言った?」 「んーん、何でもない」 ポソッと呟かれた言葉は上手く聞き取れず聞き返してみるが、ナギは首を横に振るばかりで答えてはくれなかった。

ともだちにシェアしよう!