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   雨は好きだ。全ての音を掻き消してくれるから。  僕のいかがわしい嬌声(こえ)も、あの人の(ずる)い吐息も、互いに厭らしく舐め合う水音も。 「んあ、はぁ、あぁんっ! 頂戴…もっと、もっと奥ぅ…っ!」 「本当に、君は…淫乱だね…っ」 「あ、そこぉ、いい…っ! いいっ!」  肌がぶつかる音も、潤滑油と互いの熱でぐちゃぐちゃな音も、誰にも聞こえない。 「あ、あ、ああっ! や、ダメ、も、クる…っ、あ、イク、イッちゃ…」 「あぁ…私も、もう…限界だ……」  僕が淫らに尻を突き出せば「みっともない」と嗜めるように平手で打たれる暴力的な音も、絶頂に向かう叫びも、きっと聞こえない。 「イクうぅぅう! あああああっ!」 「ん…っ! くぅ…っ!」  築100年の家を支える古く黒い柱に、僕の厭らしい精液が飛び散った。  雨は全ての音を掻き消してくれるから、僕は自分の呼吸すら聞こえない。ざー、ざー、と。

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