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 雨は嫌いだ。身体が冷えて温もりを忘れるから。  部活も室内練習で校舎を何周も走って暑くなったのに、下校する途端に冷えてしまった。  雨脚は強くなって、歩道のない道の端を歩いていたら車が横切ってずぶ濡れにされた。最悪だ。  もういいからとっとと帰って風呂に入りたい。俺は足早になる、はずだった。 「あー…まだ君のココ、ひくついて欲しがってるなぁ……」 「ん……足りない、です……坊ちゃまので…もっと…」  雨が打つ音が掻き消しているはずなのに、声が鮮明に聞こえたのは思春期男子の本能だ。    これ、近くで男女がセックスしてる、と。  俺は明日学校で男子たちへの話題のタネになると思ったから、声のする方を捜しながら進んだ。  凄く古い大きな屋敷、ここら辺の地主の別邸だとか聞いたことがある。出入りしている人を見たことはないからお化け屋敷なんじゃないかと俺たちは噂している。  門から垣根で囲われている家の周りを俺はゆっくりと息を潜めながら歩く。  声が段々と近づいてきた。家の縁側が開いていて、そこに人影が見えた。二人、間違いなくセックスしている声の主だ。 「んんんーっ! あああ、奥、奥に…っ!」 「自分で腰を動かしなさい、欲しければ…」 「はい…」  縁側の柱のところで立ちバックしている。着物の人がスーツの男にアレを突っ込まれていた。  やっべぇ、他人のセックス、生で見ちゃったよ。 「ぼ…ちゃまぁ……あ、あ、あ…っ」 「もっといやらしく私を誘惑してみなさい」 「あ、んぁ…あ、ああん…」  一つ、違和感があった。  あの着物の人、声が女にしては低いし、それに、胸がない。男と男でセックスするのか。  俺は男同士のセックスの存在すら知らなかった。一体どこにアレを挿れるんだろう。それに男が男に興奮するのか。全部が不思議だった。  しかし俺はずっと見入ってしまう。着物の人が、男のはずなのに、すごく綺麗で、すごくエロティックで、気付けば俺のモノは硬くなっていた。 「ああ、あん、も、突いてくださぁい…っ!」 「仕方ない…望みどおりに、奥に注いであげよう」 「ください、坊ちゃまの、精子を…っ! 僕の、奥にぃ!」  ザーザーザー   パンパンパンパン   グチュグチュグチュ   ザーザーザー 「あ、イク、イクぅ! 出るぅ!」 「は、あぁあ…っ!」 「ああああああ…っ!」  彼の精液が飛び散ったと同時に、俺のパンツがぐっしょりと濡れた。俺もスーツの男のように「はぁはぁ」と荒い息を整える。  右手を使わずに射精した変な感覚が、何だか気持ち悪くて、俺は傘を畳んでわざとずぶ濡れて走った。  俺の立てる足音に気が付いたあの人が、俺に妖しく笑っていたことを、俺は知らなかった。

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