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 僕のあられのない情交で興奮してくれたあの子が、嫌悪感で泣いていたことを、僕は知らなかった。  あれから数年、僕は独りになった。  僕を囲っていた彼は僕を捨てて、どこぞのお嬢様と海の向こうで幸せな家庭を築いた。  この古い家屋は僕自身で買い取って、独りになった今も棲みついたまま。 「……ではまたお話がまとまりましたらご連絡します」 「はい、ありがとうございました」  出不精の僕にとって文筆家という仕事は天職だ。まだ陽が落ちないうちに仕事も終わってしまった。  しかし今日は生憎の曇り空だ。いつ雨が降るかも分からないので洗濯物は浴室に干している。  ぽつ ぽつ ぽつぽつ サー…  「夜から雨が降るでしょう」と言っていた朝の予報は外れだ。最近こんなのばかりで少々ウンザリするが、僕は雨が好きだ。  雨が、好きなんだ。  ガタンッ  門の方から大きな物音がした。不審に思い、僕は雨が降っているのに外に出た。  玄関を開けて門まで数メートル、少々濡れるが傘もささずに小走りで門の屋根の下に行くと、雨に濡れた1人の青年が立っていた。 「あ、ここの家の人ですか? すいません、急に降られたもんだから…ちょっと此処で雨宿りさせて下さい」 「え、ええ…」

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