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第1話 囚われの俺

 俺に跨り、首筋に牙を食い込ませているこの少年の名はノーヴァ。すぐそこで、恍惚な表情を浮かべアソコを滾らせているのが、ノーヴァの養父であるヴァニル。 「ちょっとぉ、どこ見てんの? こっちに集中してよ」 「ん゙っ、うぁ····」  ノーヴァは俺の血を啜りながら、ケツに凶悪なブツをねじ込んでいる。それを遊び感覚でされているのだから堪らない。  何より、少年の股間に付いているとは思えない、俺のよりもデカい魔羅だ。俺のケツの将来が危ぶまれる。   「あぁっ····ノーヴァ、早く私にもくださいよ」 「煩いな、ヴァニル。ヌェーヴェルは今、ボクと楽しんでるんだからね。大人しく“待て”しててよ」 「はぁ~····、ノーヴァは意地悪ですねぇ」  俺の事などお構いなしで、自分たちの世界に引き摺り込んでくる。まぁ、いつもの事だが。  幼顔を快楽に歪める背徳感に満ちた情景。なんとも乙なものだと思われるのだろうか。否、最悪で最低な気分だ。    この、どうしようもなく欲に忠実なコイツらは、とうの昔に滅びたとされている吸血鬼。俺の血を啜り、快楽の底へと叩き堕とす変質者どもだ。  先の戦争を生き延び、人知れず闇に紛れて生きてきた。我々人間が迫害し、残虐の限りを尽くされてきた種族だ。  100年ほど続いた凄惨な戦いで遺ったのは、ゴミみたいなものだった。人間の醜悪な優越感によって確立された、吸血鬼は悪の暴徒だという印象。それと、人間は崇高だというクソみたいな2種族間の優劣。  だからと言って、憐れだとか庇護すべき対象とは思っていない。生き残りと言えば希少な気はするが、ただ図太くしぶとく人間を貪り喰ってきただけの奴ら。出会った当初は、ただただ忌むべき存在だった。  吸血鬼は特有の能力で若さを保っている。ノーヴァの実年齢は200歳を超えるらしいが、せいぜい12歳程度にしか見えない。  時々、大人の男の姿になるのだが、体力を使うとかで俺の血を大量に吸うから禁止した。超絶美少年で、稀に超絶美男。腹が立つほど見目麗しい。  ヴァニルは20歳そこそこの見た目だが、実際は300歳を超えているらしい。吸血鬼の平均寿命って何歳なんだろう。年齢詐称ジジイのこいつは、金髪紅眼のくっそイケメン野郎。そして、絶望的な変態だ。絶対に女は喰わないらしい。  俺のような容姿端麗な若い男が好みらしく、選り好みが激しい。俺がノーヴァに吸血されているところを見るのが、何よりも興奮するんだとか。牙が刺さる瞬間の痛みに苦しみ、すぐさま与えられる快感に美しい顔を歪ませるが良いらしい。まったく、イカレてやがる。  そんな2人が出会ったのは、惨たらしい歴史が引き起こしたただの偶然だった。それは大昔に起きた吸血鬼と人間の戦の最中(さなか)の事。  産まれたばかりで両親を失ったノーヴァは、運良く王魔団に保護された。当時ヴァニルは王魔団に所属していて、たまたま上官が保護したノーヴァの相手をしていた。  変態的な意味で子供好きだったヴァニルは、暇を見ては施設にいるノーヴァに会いに行った。その結果、甘えに甘やかされたノーヴァはヴァニルに懐き、半ば押し付けられるように引き取ったんだそうだ。  そうして2人は永い永い年月を共に過ごし、いつしか慕い合う仲に────なることはなく、ひょんな事から俺を囲う生活が始まった。  その成り行きは単純にして愚鈍。俺は、救いようのない阿呆だったと自覚している。    学友達に、肝試しだと連れてこられた旧王魔団の廃城。肝試しと名は打っているものの、ただのアピールの場だ。  女達は俺の容姿と家名を求め群がる。あざとく媚びて、か弱いフリをして見せる。俺の庇護欲を駆り立てようと尽力しているのだ。男共はおこぼれを狙っている。友とは上っ面だけのクソどもに虫唾が走る。    吹き晒しになった最上階。そこで、密かに城を(ねぐら)にしていたヴァニルとノーヴァに出くわした。月明かりに照らされて、危うい存在の彼らは透けて見えた。それはさながら、噂通りの幽霊の様だった。  その場に居た全員が恐れおののき、パニックになって走り出した。腰を抜かして動けなくなった俺は、無情にも置いてけぼりをくらった。流石、友達ごっこだ。  ぺたっと座り込んだ俺の頬に、ノーヴァが手を添えて微笑む。胸が高鳴り、背筋をゾクゾクと何かが走り抜けた。  俺がマヌケだったんだ。絶世の美男の姿で現れたノーヴァに誘われ、ちょっとばかし見目麗しいからと、ホイホイと奴らの居住区(テリトリー)に立ち入ったのがマズかった。我ながら、実にちょろかったと思う。    世界に名を轟かせるヴァールス家の嫡男ともあろう俺が、吸血鬼の小僧と変態ジジイに良いようにされる日々を送る羽目になるとは。なんとも不甲斐ない。  かくして、この2匹の生き残り吸血鬼を、格式高い我がヴァールス家にて養う事になった。奴らの洗脳の様な力で、家の者の意識を操れるらしい。なんの違和感もなく屋敷をうろついているし、俺並みの扱いを受けている。良いご身分だ。  そして、俺は囲われの身。逆らう事もできず、それどころか俺の方が離してやれないというのが本音だ。絶対に2人には言わないが。  俺がとっくに快楽の虜と知れば、さらに好き勝手に弄ばれるのだろう。あの、愉悦が全てのバカ2人のことだ。俺が毎夜潰されるであろう事は、火を見るより明らかである。  俺の本心が関係しているのか、通常運転の吸血鬼の能力なのかは知らないが、俺は絶対に2人に逆らえない。口と身体が、別々の意識を持っているかの様に。  俺の都合とは関係なく、夜な夜な2人が俺の部屋に訪れる。そして、この身を弄ばれるのだ。  俺の身体を差し出すことで、俺の周囲の安寧は守られている。そういう大義名分だと言い聞かせている。 「ヌェーヴェル? ヴェル! 聞いてる? またトんでたでしょ」 「ん····いや、トんでない。ちょっと考え事してただけだ」 「へぇ····。ボクのおちんちんねじ込まれてんのに、考え事する余裕あるんだ。へぇ~」 「違っ、悪かった。ぼーっとして、余裕なんか、ないって····んあ゙ぁ゙ぁ!!」 「これ、本当に潰してあげようか?」  ノーヴァは入り口をこねくり回し、グッと押し込むと前立腺を抉るように潰す。 「痛っ、待て! そんなに強く、何度もしたら、痛いんだって」 「痛いの好きだよね? いつも涎垂らして喜んでるくせに」 「なっ!? 喜んでないからなっ! んぐぁっ!! も、やめろ····痛いんだって····んっ」 「声、甘くなってきたよ? ほら、悦くなってきたんでしょ?」 「んぁっ、そんなわけ····ひあぁぁ!!」 「まだまだお漏らししてね。ヴェルが快楽に堕ちれば堕ちるほど、沸き立つ血が美味しくなるんだから」  ノーヴァは俺の首筋舐め、トドメと言わんばかりに前立腺を押し潰した。 「イ゙ッ··ぎあぁぁぁ!!! 痛゙ぃっ、もう出ない!! やだ、もうやめろって!!」 「ノーヴァ、そろそろ解放してあげなさい。ヌェーヴェルが泣いてしまったじゃないですか」 「本当、ヴェルは泣き虫だなぁ」 「だっ、誰の所為だと思ってんだ! この変態幼──むぐっ」 「まーた言おうとしたね。お仕置きだよ~」  ノーヴァの見目が麗しく、女の子と見間違える程なので“幼女”と揶揄って殺されかけたことがある。これを言うとノーヴァがキレることは知っているが、腹が立つとつい言ってしまう。  そして、まさに今これから、酷く仕置きをされるのだ。恐怖とともに、ゾクゾクと込み上げるものがある。  しかし、そんなに甘い事は言っていられないのである。あまりにも容赦のない責めが続くのだから。 「ひぐっぅあ゙ぁ゙ぁぁぁぁ!! お゙え゙ぇ゙ぇぇっ···· ごめっ、奥、やめ゙て····くらさい······もう、許して····」 「ヴェルはおバカだから、ボクが怒るのわかってて言おうとするんでしょ? 何回目? いい加減、こうなるって学習しなよね」 「ノーヴァ、程々にと言ったでしょう。私ができなくなるじゃないですか」 「いいよ。代わったげる。朝までヴァニルに抱かれたらいいよ」 「お前、ら····。俺の血が目的だったんだろ······」 「貴方の血は勿論。しかし、その躯の全てをしゃぶり尽くしたくなってしまったのですよ。それほどに、貴方が美味しいという事です」 「ふっざけんな······」 「いい加減慣れなよ。いつまで初々しいフリしてんのさ」 「フリじゃねぇよ! こんなもん、慣れてたまるか!!」  とまぁ、こんなふしだらな関係を、かれこれ1年近く続けている。毎日、幼女みたいなクソガキに弄ばれ、死ぬ寸前までド鬼畜絶倫イケメンに抱き潰されるのだ。このままでは、本当に身が持たないだろう。

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