1 / 88

第1話

朝日がカーテンの隙間から差し込む。 「あ、もう朝か…」 う~んと伸びをしてレンはマンガを読むのをやめた。 「徹夜しちゃったな。1度読み始めると止まらないんだよな」 今レンは転生物、異世界物にハマっている。 夏休みの今遊ぶ友達も居ないレンは1日中部屋に閉じこもっていた。 「あ~あ、異世界いいな~。華やかな宮殿とか冒険とか楽しそうだな。俺も住んでみたいな~」 「まっ、これはマンガや小説の世界だからな。 現実は夏休み明けのテストだぜ」 ハァ~とため息をついて一眠りしようとベッドに入った。 「なんで転生物って死ぬのが多いんだ? 痛いのは嫌だから、寝て起きたらどこかに転生してないかな…」 レンはベッドの柔らかさで一瞬で眠りに落ちた。 遠くの方で声がする。 『早く…早く来てくれ…お前を…待っている』 『あなたは…誰ですか? 』 『お前が…必要だ…私には…お前が…』 レンの前にはボヤがかかった人物が見える。 『必要? って…俺の…何が…』 『頼む…早く…来てくれ…』 レンの呼びかけには答えず、その人物はそう言って姿を薄めていく。 『待って! 待って! 』 「待って!! 」 ガバッと勢い良く起きた。 伸ばした手が虚しく浮いている。 「…夢か…今のは…なんだったんだ? 」 レンは汗びっしょりで目が覚めた。 時計を見ると12時を回っている。 「あつ…シャワー浴びて、昼ご飯食べるか…」 シャワーを浴びさっぱりしたレンは、さっきの夢を思い出していた。 「あの夢はなんだったんだろう? 誰が俺の事を…」 レンは色々考えてみたが、思いつかないので諦めた。 「まっ、いっか! そういえば新しいゲームが届いてる頃だ! 」 いそいそとポストを覗きにいく。 「きてるきてる! 今日はこれで楽しむぞ! 」 レンはワクワクしながらゲームのカバーを外す。 「なになに…魔法を駆使して第三王子を国王にしろ! か…今までの物とは少し違うから面白いかな? 」 今までのゲームは悪徳令嬢になっただの、冒険をただするだので、もうちょいパンチが欲しかった。 説明書を読みながらレンはふと思う。 「このゲームって…第三王子を国王にするんだよな? じゃあ主人公って、この第三王子なんじゃ…俺はそれを手伝うんだよな? 」 「俺になんかメリットあるのか? 」 今までと少し違うパッケージの第三王子がイケメンだったので、余り考えずに買ってしまったレンは今更ながら疑問を問いかけた。 「まっ、いっか。これはこれで色々な魔法が使えるから楽しそうだし! 影の立役者とかかっこよくないか? 」 自分で納得してゲームを起動する。 ウィィィィーーーンと音を出し画面がつく。 「さてさて、俺はなんのキャラクターにしようかな? 」 色々なキャラクターがあり、レンは画面を見ながら悩む。 「騎士、令嬢、侍女、執事、侍従…色々あるな…う~ん…あっ、医師とかある! へー今までのには無かったな、面白そう! 少しは役にたつかな? 」 レンは医学部の学生だ。友達は居ない陰キャだが、授業は真面目に聞いている方だ。 「よし! 医師になって第三王子に仕えたらいんだな! 」 「名前、名前、う~ん、ルキアにしよう! なんかかっこいいし」 設定をしてゲームをスタートさせた。 画面には中世ヨーロッパの様な景色が映し出された。 「へぇー、画像綺麗だな! 」 「ん? 最初は町の病院で働いてるのか? おいおいどうやって宮殿に行くんだ? 」 ストーリーを続けていてもさっぱり宮殿へ行くルートが分からない。 しばらくしてレンは1度ゲームを中断する。 「なんだ? このゲームは? 説明書も書いてないから、どうやって進むのかさっぱりだ。誰かYouTubeにやり方上げてないかな? 」 レンは携帯をだし検索をしだした。 「あれ? 誰も上げてないぞ? このゲームそんなに人気ないのかな? 」 色々見てみたが、さっぱり分からなかった。 パッケージの第三王子を見ながら文句を言う。 「あなたを国王にしなきゃいけないんでしょ? やり方教えてくれなきゃわかんないじゃん! 国王になりたくないのか? 」 パッケージの第三王子は微笑むだけだった。 「本当にイケメンだよな? 緑の目が綺麗だし。こんな目で見つめられたら女の子はみんなイチコロだよな? 」 微笑む第三王子をポイッと横に置いて、ベッドに転がる。 「でも、昔の人は大変だよな? 兄弟同士で争うんだろ? 心許せる人なんて…ふぁ~あ…いるのかな…あ~ねむ…」 また眠くなりレンはウトウトしだした。 浅い眠りのレンの頭に、また声が聞こえてきた。

ともだちにシェアしよう!