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第1話
朝日がカーテンの隙間から差し込む。
「あ、もう朝か…」
う~んと伸びをしてレンはマンガを読むのをやめた。
「徹夜しちゃったな。1度読み始めると止まらないんだよな」
今レンは転生物、異世界物にハマっている。
夏休みの今遊ぶ友達も居ないレンは1日中部屋に閉じこもっていた。
「あ~あ、異世界いいな~。華やかな宮殿とか冒険とか楽しそうだな。俺も住んでみたいな~」
「まっ、これはマンガや小説の世界だからな。 現実は夏休み明けのテストだぜ」
ハァ~とため息をついて一眠りしようとベッドに入った。
「なんで転生物って死ぬのが多いんだ? 痛いのは嫌だから、寝て起きたらどこかに転生してないかな…」
レンはベッドの柔らかさで一瞬で眠りに落ちた。
遠くの方で声がする。
『早く…早く来てくれ…お前を…待っている』
『あなたは…誰ですか? 』
『お前が…必要だ…私には…お前が…』
レンの前にはボヤがかかった人物が見える。
『必要? って…俺の…何が…』
『頼む…早く…来てくれ…』
レンの呼びかけには答えず、その人物はそう言って姿を薄めていく。
『待って! 待って! 』
「待って!! 」
ガバッと勢い良く起きた。
伸ばした手が虚しく浮いている。
「…夢か…今のは…なんだったんだ? 」
レンは汗びっしょりで目が覚めた。
時計を見ると12時を回っている。
「あつ…シャワー浴びて、昼ご飯食べるか…」
シャワーを浴びさっぱりしたレンは、さっきの夢を思い出していた。
「あの夢はなんだったんだろう? 誰が俺の事を…」
レンは色々考えてみたが、思いつかないので諦めた。
「まっ、いっか! そういえば新しいゲームが届いてる頃だ! 」
いそいそとポストを覗きにいく。
「きてるきてる! 今日はこれで楽しむぞ! 」
レンはワクワクしながらゲームのカバーを外す。
「なになに…魔法を駆使して第三王子を国王にしろ! か…今までの物とは少し違うから面白いかな? 」
今までのゲームは悪徳令嬢になっただの、冒険をただするだので、もうちょいパンチが欲しかった。
説明書を読みながらレンはふと思う。
「このゲームって…第三王子を国王にするんだよな? じゃあ主人公って、この第三王子なんじゃ…俺はそれを手伝うんだよな? 」
「俺になんかメリットあるのか? 」
今までと少し違うパッケージの第三王子がイケメンだったので、余り考えずに買ってしまったレンは今更ながら疑問を問いかけた。
「まっ、いっか。これはこれで色々な魔法が使えるから楽しそうだし! 影の立役者とかかっこよくないか? 」
自分で納得してゲームを起動する。
ウィィィィーーーンと音を出し画面がつく。
「さてさて、俺はなんのキャラクターにしようかな? 」
色々なキャラクターがあり、レンは画面を見ながら悩む。
「騎士、令嬢、侍女、執事、侍従…色々あるな…う~ん…あっ、医師とかある! へー今までのには無かったな、面白そう! 少しは役にたつかな? 」
レンは医学部の学生だ。友達は居ない陰キャだが、授業は真面目に聞いている方だ。
「よし! 医師になって第三王子に仕えたらいんだな! 」
「名前、名前、う~ん、ルキアにしよう! なんかかっこいいし」
設定をしてゲームをスタートさせた。
画面には中世ヨーロッパの様な景色が映し出された。
「へぇー、画像綺麗だな! 」
「ん? 最初は町の病院で働いてるのか? おいおいどうやって宮殿に行くんだ? 」
ストーリーを続けていてもさっぱり宮殿へ行くルートが分からない。
しばらくしてレンは1度ゲームを中断する。
「なんだ? このゲームは? 説明書も書いてないから、どうやって進むのかさっぱりだ。誰かYouTubeにやり方上げてないかな? 」
レンは携帯をだし検索をしだした。
「あれ? 誰も上げてないぞ? このゲームそんなに人気ないのかな? 」
色々見てみたが、さっぱり分からなかった。
パッケージの第三王子を見ながら文句を言う。
「あなたを国王にしなきゃいけないんでしょ? やり方教えてくれなきゃわかんないじゃん! 国王になりたくないのか? 」
パッケージの第三王子は微笑むだけだった。
「本当にイケメンだよな? 緑の目が綺麗だし。こんな目で見つめられたら女の子はみんなイチコロだよな? 」
微笑む第三王子をポイッと横に置いて、ベッドに転がる。
「でも、昔の人は大変だよな? 兄弟同士で争うんだろ? 心許せる人なんて…ふぁ~あ…いるのかな…あ~ねむ…」
また眠くなりレンはウトウトしだした。
浅い眠りのレンの頭に、また声が聞こえてきた。
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