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第43話
自分の前を無言で歩くガブにカオは色々と妄想してしまう。
(急に呼び出してどこに行くんだろう? 改まって今日の事怒られるのかな? それとももう私に関わりたくないとか? そんな…それは辛すぎるよ…でも私も理不尽に八つ当たりしたし…)
マイナス事しか頭に浮かばずカオは悲しくなってきた。
「カオ様、つきました」
突然ガフが止まり声をかけた。突然止まられたので勢い余ってガフにぶつかった。
「いたっ! ガフ殿、突然止まらないで下さい! あれ? ここって…」
カオとガフが着いた場所は昼間社交界を行った大広間だった。
「ガフ殿…なんでここに? 」
ここに連れて来られた理由が分からずカオはキョトンとしてガフを見る。
ガフはカオを見つめながら、カオの前に膝まづいてカオの手を取った。
「ガ、ガフ殿? 」
突然のガフの行動に狼狽える。
ガフは膝まづいたままカオの顔を見ながら意を決した様に、
「カオ様、もしよろしければ私と踊って頂けますか? 」
と言い、手の甲にキスをした。
「ガ、ガフ殿…私をからかってますか? 」
突然の言葉に頭が整理出来ず掠れた声で尋ねる。
「違いますよ」
「では、これは幻ですか? 私の願望が現実に…」
「違います」
ガフが笑いながら否定する。
「ガフ殿、私と踊りたいんですか? 」
「はい、そうでございます」
「私は男ですよ? 」
「はい、知っております」
「この体勢で言うと誤解しますよ? 」
「誤解とは? 」
「えっと…膝まづいてお願いするのは…相手に好意があると…」
自分で言ってて恥ずかしくなってきた。
「では、誤解ではないですね。その通りでございます」
「えっ? その通り…? 」
「はい、私はカオ様に好意があります。好意というより、お慕いしております」
ガフの突然の告白にカオは固まった。
(今、好きって言った? お慕いしておりますって…好きって事だよね? )
「カオ様? 」
固まって無言になったカオにガフは声をかけた。カオはガフの顔を見ながら、
「ガフ殿…今私を好きと言いましたか…? 」
ようやく声がでたがとても小さくか細い声だった。
本当にガフが言った言葉が信じられず確認をしたかったのだ。
「はい、言いました」
ガフの再度の宣言にカオの目から大粒の涙がこぼれだした。
「カ、カオ様? 」
カオが泣き出したので慌てて立ち上がりカオの顔を覗き込む。
「私、何か失礼な事を言ってしまいましたか? 」
ガフの心配そうな言葉に首をフルフルと振る。
「ち、違います…凄く…嬉しくて…」
まさか、ガフに告白されるとは思ってなく、酷い事を言われるのではと緊張していたカオは力が抜けホッとしたのだ。
「それなら良かったですがどうか泣き止んで下さい」
ガフは優しくカオの涙を拭き取る。
「はい、すいません。ガフ殿…」
「はい? 」
「私もガフ殿が大好きです。初めて会った時から、大好きでした! 」
カオの逆告白にガフは驚いた。まさかそんな前からら好いてくれてたとは思ってなかった。
「そんな前から…気づかずにすいませんでした」
「だって、ガフ殿は恋愛に興味が無さそうだったし…当時子供だった私なんて相手にしてくれないと思ってたので…でも今は違います! ちゃんと言わないと伝わらないと兄上にも言われました! 」
「えっ? アルフ様は存じ上げていたのですか? 」
「はい、ルキアにもすぐバレました…」
「全く教えてくれないとは、人が悪い…」
「そ、それは…2人とも私から言うのを待っててくれたので…遅くなりましたが…」
「では、今からその時を取り返して行きましょう」
「ガフ殿…」
カオは、ガフの優しく微笑んでくれる顔を見て嬉しくなり自分から抱きついた。
「カ、カオ様…」
ガフは抱きついてきたカオを優しく抱き返す。
自分の腕の中にスッポリ収まるカオをとても愛しく感じた。
ガフは腰に回した片手に少し力を入れて自分の方へ引き寄せる。
もう片方の手をカオの頬に触り持ち上げる。
カオが顔を上げるとガフはそのままゆっくりと唇にキスをした。
そっと触るだけの優しいキス。目を閉じるカオの目から涙がこぼれる。
カオは全身から幸せが湧き上がってくるのを感じた。
ついさっきまで拒絶される事しか考えてなかった。それがまさか好きだと言われてしかもキスをされている。
体中が喜ぶのも無理はない。
そっと唇が離れると今度はガフからカオを強く抱き締めた。
「カオ様、私の恋人になってくださいますか? 」
ガフの問いに「はい」と何度も頷きながら答える。
カオから正式な返事をもらいガフは再度カオにキスをした。
今度は少し長くそして濃厚にカオにキスをしていく。
「ンッ…」
途中で漏れ出るカオの吐息はガフをどんどん刺激する。
「ハッ…カオ様…」
どんどん激しさが増しカオは立ってるのがやっとだった。
「ンッ…ガ…ガフ殿…」
体に力が入らなくなりカオはその場に崩れ落ちる。
「カ、カオ様! 」
正気に戻り慌ててカオを支える。
「大丈夫ですか? 」
心配そうに覗き込むガフにカオは不貞腐れた顔をした。
「ガフ殿、ずるいです。そんな余裕で…私は立ってるのがやっとなのに…」
カオの言葉に驚きながら微笑みを浮かべる。
「とんでもないですよ、余裕なんて…カオ様を触っていると自分でも歯止めが効かず急ぎすぎてすいませんでした」
ガフはカオみ見て「私が怖いですか? 」と尋ねた。
カオはフルフルと横に振り自分から抱きつく。
「怖くなんてないです! 」
ギュッと抱きついてくるカオを抱き返し優しく頭を撫でる。
「カオ様が嫌がる事はしないので嫌なら言ってくださいね」
手を取りカオを立たせる。
「さて、カオ様。再度言いますが私と踊って頂けますか? 」
「はい、喜んで」
2人は腕を組んで広場の中央へ行く。2人が真ん中に立つと、突然音楽が鳴り出した。
「ガフ殿、音楽が聞こえます…」
驚きながらガブに聞いた。
「はい、アルフ様にお願いして演者をお借りしました」
カオが後ろを向くと仕切りがある。音はそこから聞こえてきた。
「えっ? その仕切りの後ろにいるのですか? 」
「はい」
ガフの返事にカオは真っ赤になる。そこに演者がいるという事は、先程の自分達のやり取りも全部聞かれていたのがわかったからだ。
「ガフ殿、なんで言ってくれなかったんですか? 」
ポカポカとガフを叩きながら怒った。
「すいません、ロマンチックにしたかったもので…でも、演者には何を説明するか伝えてるので驚いてはないと、イタタ…」
「もう! 恥ずかしすぎて死にそうです! 」
「それは困りますね。カオ様は私の大切な人なので」
ガフの言葉にカオは真っ赤になりながらも嬉しかった。
「ガフ殿…もう、次からは言ってくださいよ? 」
「かしこまりました」
深々とお辞儀をしてカオの手を取る。
音楽に合わせて2人はダンスを楽しんだ。
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