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第88話(最終話)
ハアハアと息を吐きベッドうつ伏せになるルキア。
久しぶりの逢瀬に体力を使い切った気がした。
「ルキア、大丈夫か? 」
「は、はい。久しぶりでちょっと疲れました…」
「お前、そんなんで毎日出来るのか? 」
「えっ? 毎日ですか? 」
驚いてアルフの顔を見る。
「そうだ、毎日でも足りない。四六時中抱いていたい」
「アルフ様…それは国王としてどうかと…」
呆れたように言った。
「分かってるよ比喩だ。政務はしっかりしてるぞ? お前が居ない間も…」
ルキアにキスをしながら頑張ったんだと少し甘えて見せた。
「アルフ様、私はもう何処にも行きません。ずっとお傍にいます。こんなに人を愛したのは初めてです」
「ルキア、私もだ。こんなに人を愛しいと思ったのは。もう、傍を離れるなよ? 」
「はい、もちろんです」
「プレーンに譲ったあとはアデウス国を旅しよう。この国は広い。お前と一緒に色々回りたい。ルキア? 」
返事がないので見たらベッドにうつ伏せのまま眠っていた。
アルフに会えない間ルキアも殆ど寝て居なかった。
ようやく会えた安堵と疲れで一瞬のうちに眠りについた。
アルフはルキアの寝顔を眺めて幸せを感じていた。
その時突然声がした。
『アルフ…アルフ…』
「誰だ? 」
アルフは顔を上げた。
『アルフ、私よ』
「母上! まさか、母上ですか? 」
うっすら人影がアルフの前に現れた。
透けていてたがその顔は王妃だった。
『アルフ、ありがとう。あなたとルキアのお陰で、事実が分かったわ…』
「母上…ルキアを呼んだのは本当に母上だったのですね」
『そうよ、あっちの世界でルキアの母上にお会いしてね、あなたの助けになってくれそうと思ったの』
「ルキアが想像した通りです…ですが、オーム兄上は救えませんでした…すいません…」
『いいのよ、オームにはもう会えたわ。とても反省してる。彼の事は任せなさい』
「そうでしたか、それならよかったです。ところで、ルキアの母上は何か仰っていましたか? 」
気になる事を聞いた。
『そうね…まさか、あなたとルキアが結婚するとは思わなかったそうよ』
王妃はクスクスと笑いながら言った。
「母上、それもご存知なんですね…」
『そうよ、ルキアとあなたにお礼を言おうと思ったら、逢瀬が始まったから遠慮してたの』
「母上、見てたのですか? 人が悪い…」
アルフに睨まれ王妃は楽しそうに笑った。
『見てないわよ。終わるのを待ってたの。ルキアは寝てしまったけど…アルフ、私は嬉しいわ。あなたが本当に愛せる人に出会えて…』
「母上…私はルキアを一生をかけて守ります。安心して下さいと、ルキアの母上にお伝え下さい」
『分かったわ。私も思い残す事がなくなったから、そろそろ行くわ。アルフ、国王の責務を全うしなさい。上から応援してるわ…』
「母上もお元気で…会えて嬉しいです」
『アルフ、愛してるわ。サニー、プレーンにも伝えて…』
「はい、母上。私も愛してます…」
ふわっとアルフを影が包み込み消えた。
「アルフ様? 誰かと話してましたか? 」
目を擦りながらルキアが聞いてきた。
話し声に目が覚めたようだ。
「ああ、母上が会いに来てくれたよ」
「えっ? 王妃様が? 」
「ああ、お前の言っていた通り、上の世界でお前の母上に会ったそうだ」
「私の? 本当ですか? 」
「ああ、私と結婚する事も知っていた。喜んでくれていたよ」
「そっか…そっか…元気ならよかったです」
「さっ、詳しくは明日に説明してやる。もう、寝よう。こっちにおいで」
アルフは自分の腕でルキアを抱き締め眠るよう言った。
「はい、アルフ様。おやすみなさい」
「ああ、おやすみルキア。良い夢を見よう」
ルキアのおでこにキスをして、アルフも眠りについた。
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朝、アルフが起きると自分の腕の中にルキアがいた。
ルキアが戻ってきた。ちゃんと居る。
アルフは嬉しくて寝ているルキアにいっぱいキスをする。
「んっ、アルフ様? もう起きたのですか? 」
アルフのキスに目を覚ます。
「おはよう、ルキア」
「おはようございます、アルフ様。ンッ…ちょ、アルフ様? 朝ですよ? ンッ…」
朝からアルフのキス攻撃に、ルキアが引き離す。
「嫌か? 」
「嫌ではないですが…ンッ…ダメです…」
アルフはルキアの言葉を無視し、ルキアの首筋を舐めだした。
「はい、そこでストップですよ! 」
ガフがパンッと音を出し手を叩く。
「ガフ、いつの間に来たのだ? 」
ルキアは慌てて布団の中に隠れた。昨日のまま裸で寝ていたので恥ずかしかったのだ。
「すいません、声をかけたのですが無視をされたので」
全然悪びれもせず謝る。
「全然、反省してる態度じゃないぞ? 」
「そうですか? では、リビングで待ってますので支度して下さい。今日は会議が朝からありますので、早くして下さいね」
ガフが出て行くとアルフは大袈裟にため息をついた。
「はあ、朝のいい雰囲気が台無しだ。せっかくルキアが戻って来たのに…全然イチャイチャ出来ない…」
「もう、アルフ様。仕事はしなければいけませんよ? 私も、ヨリムさんに挨拶してきますので…」
「分かった…夜にはまた来いよ? 」
「はい、もちろんですよ」
アルフを送り出しルキアはヨリムの所に向かう。
空を見上げると綺麗な青空が見えた。
「戻って来たんだな…」
ルキアは空を見上げ今までの事を思い出していた。
色々あったが、今この時ここにいられる事に感謝をしていた。
これからここで生きていくアルフと共に。
ルキアは、うーんと伸びをし「よし! 行くぞ! 」と元気よく走り出した。
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柚来実です。
長い作品、最後まで読んで頂きありがとうございます。
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