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「······う······っ」 下半身に鋭い痛みを覚え、覚醒させられる。 布団の中で、浴衣越しから感じる固い感触に周りを起こさない程度のため息を吐いた。 またこれを取り付けられることになるなんて。 数日前、碧人にお願いをして一緒に出かけた時のこと。 葵人は誰かに監視されている中での生活になってから、考えていることがあった。 自分はそうされる罪を背負っているが、その親から産まれてしまった二人まで同罪だと言わんばかりに、一度も外に出してくれたことがなかった。 前に一度、「子ども達だけは自由に外に出させて。その分、僕が罪を背負うから」と言ってみたが、「あの二人も葵と同じぐらい大切なんだから、外に出してしまったら、取り返しのつかないことになる」といつもと変わらない笑みを見せて返してきた。 しかし、その笑みは、自分のことを裏切った者が何を言うかという、冷酷な笑みだった。 子ども達のことは、桜屋敷家の跡取り程度しか思ってないのに。 その時から葵人は、子ども達第一に考えに考え、そして出かける日に決行した。 出かける際は、常に隣に並んでいる。 腰に手を添えて、自分の手元から離れさせないようにする徹底ぶりに、なかなか隙を与えさせなかった。 が、しかし。機会があった。 碧人に"お願い"していた本屋に行った時だ。 「僕に言えば買ってくるのに」と言う碧人に、「子ども達に読ませる絵本は、僕も一緒に選びたいから」と返しつつ、隙を窺っていた。 腰に手を回していたら、取りにくい、だなんて言ったら、逃走しようとしていることに勘づかれてしまう。 だとしたら、一か八か。 「碧人さん、この絵本いいと思わない?」 「葵がそう思うなら、僕はいいよ」 「ううん。碧人さんも見てみて」 押し付けるように碧人に手渡すと、空いていた手で受け取った。 あともう少し。 「葵も一緒に見る?」 「僕は他のも探すから、碧人さんだけで見ていて」 「そう」 腰に回していた手を離した。 離してくるとは思わなくて、並べられた絵本に向けていた目を見開いたが、慌てて取り繕った。 今すぐに離れてはダメ、と何度も念じ、速まる心音を聞きながらも、平静を装って、さりげなく少しずつ碧人から離れていき。 駆け出した。

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