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第一章 大魔王ルシファー

 ルシファーにはこの世で嫌いなモノが3つ有る。  1つ目は生みの親である神 2つ目は天界の住人 3つ目はルシフェルと言う自分の名前  そして、今此処にはルシファーの嫌いなモノが二つ揃っている。不機嫌丸出しの顔でルシファーは目の前の天使を睨み付ける。  長髪の男は「サリエル」と言いルシファーの昔馴染みだ。そして、隣に居る短髪の男は「ミカエル」と言いルシファーと血を別けた弟である。  彼等は何かと理由をつけてはこうして魔界へとやって来てはルシファーとグザファン達を天界に戻そうとしてくるのだ。 「よくもまぁ、こんなにくだらない事に必死になれるもんだ。  俺達は天界になんざ戻るつもりは無いし、戻る時は神を殺す時だ。」 「すまないが諦めてくれ。お前たちは嫌いでは無いが俺も神は許せねぇ。」 「……私も神がなさった事を全て肯定する訳ではありません…。  ですが、神にも何かお考えが――――。」 「サリエル。お前はアイツの残虐性を知らないだけだ。  この魔界に居る奴等よりもアイツは残虐で冷酷な奴だ。」 「ルシフェル……」 「その名前で呼ぶなって何回言わせんだよ。」  ルシファーはジロッと目の前にいるサリエルを睨みつける。  その場が一気に氷点下へと下がりその場に居たミカエルとグザファンは静かに息を飲む。  だが、サリエルは笑みを浮かべたままルシファーの前へと腰を降ろす。 「ルシフェル。私は貴方を悪魔の名で呼ぶ事は出来ません。  私の中では貴方は永遠に美しく気高い天使の頃の貴方のままで、どんなにその名が憎くても私には愛おしい名前なのです。どうか、その名で呼ぶ事をお許し頂けませんか?」 「……………たまになら。」 「ふふっ…。やっぱり貴方はお優しい方ですね。ありがとうございます。」 「流石サリエルだな…。あのルシファーを……。  俺の時もあんな感じで素直に従ってくれれば世話無いんだがな。」  グザファンはホッと胸を撫でおろしキッチンの方へと足を進めた。慣れた手つきで4人分の紅茶を用意する。  定期的に行われる「ルシファー・グザファン天界帰還計画」は何時もグザファンの淹れる紅茶から始まるのだ。ルシファー自身も最初は乗り気では無かったが茶菓子目当てに大人しく参加するようになった。 「それで、兄上…。天界に戻る意思は本当に無いのですか?  僕は兄上とまた天界で一緒に暮らしたいです。」 「俺もお前と一緒に暮らしていた頃は楽しかったけど天界には絶対に戻りたくねぇ。」 「何故ですかっ!兄上はどうして天界をそこまで嫌うのです!」 「………お前らが盲目的に信じているカミサマってのはな本当は残虐で冷酷な奴だ。  慈悲なんて欠片も無い化け物だ。」 「ルシフェル…言葉にはお気を着けなさい。仮にも私達の産みの親です。」 「産みの親が自分の子を自分の手で殺すのかよ。」 「ルシファー。その話はやめろ。」  ルシファーが神を殺そうとしたのには幾つか理由があった。その一つにグザファンの腹違いの弟の処刑がある。  人間の子と恋に落ち孕ませてしまったその天使は、目の前で神により赤子と恋人を殺され自らも神の手により処刑された。それも全天使達の前でだ。公開処刑が宣告された時、ルシファーは神に対し抗議をした。何も人間や天使を殺さなくったって神の力があれば全てを無かった事に出来る筈なのになぜそうしなかったのかと。  だが、神から返答等得られる筈も無く刑は執行されたのだ。まるで、見せしめの様に処刑された天使は最後まで神に対する恨みを吐き続けていた。その天使は死の間際、目の前の(グザファン)に「ごめんね」と残して死んでいったのだ。 「とにかく、俺達は天界には戻るつもりは無い。」 「俺もルシファーの意見に賛同だ。俺達には天界はここより地獄なんだ。  悪いが諦めてくれ。」 「グザファン…。」 「では、私達にも考えがあります。  私達も此処に滞在し、貴方達の考えを覆してみせます。」 「「はぁ???」」 「もちろん、神からの許可は既に頂いております。ね、ミカエル。」 「はい!兄上と今日から一緒に住めると思うと嬉しくて踊り出しそうです!」  

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