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告白 side.敬吾

「好きです!!付き合ってください!!」 目を丸くして翔は、これが初めての告白です、 みたいな表情をし、たまたま通りがかった俺を見て、瞬時に気まずそうな表情をする。 いったい、何度、この光景を目にしたことだろう。 その度に翔は同じリアクションをする。 同じリアクションを何度繰り返せば良いのやら…… 患者然り、看護師然り、男女問わず言い寄られている自分の恋人は、元モデル譲りの母親似のおかげか、外見はかなりのイケメン、と言うより美人の類に入るだろう。 ぶっきらぼうな俺に反して、性格も悪くなく、 誰にでも分け隔てなく平等に優しく笑顔で 接している姿は医者の鑑と言ってもいいだろう。あくまでも仕事での姿ではあるが。 けれど、恋人が口説かれているのを見るのは、 あまり喜ばしい光景とは思えない。 腹の中ではどす黒い感情が渦巻いている。 どうせ明日が休みなら今夜も腰が立たなくなるくらい喘がせてやろうか、と思ってしまう。 翔に対しては狭量な自分が大人気ない、と 思いながらも、嫉妬はしてしまう。 いつも、翔が相手を傷つけないように、毎回 「気持ちは嬉しいんだけど、オレには好きな人がいるから、ごめんなさい」 と優しく断っているのも、もちろん知っている。 簡単に鞍替えできるようなタイプでもないことも。 それは翔の過去に理由があり、その憂いも 色気に拍車をかけているということも。 ある日、高校で突然親友にレイプされて、 学校中の慰みものになっていた事、 やっと心から愛する人が出来て幸せを感じている最中に、突然の別れを告げられ、その時には頭に血が上ってしまったが、縋ろうと追いかけとしたよう時にはすでに、その所在が分からなくなり、やっとの思いで再会した時にはその命の灯火は消えゆく直前の虫の息だった。 それでも躰を売ってでも、その命を少しでも永らえようと健気な姿を見せていた。 挙句、躰を売る必要がなくなった後、 相手にストーカーされ、殺されかけたことすらあった。 今は俺を愛してくれて、受け入れてくれている。 自分も一目惚れした一人ではあるが、 初めて抱いた日のあの妖艶なほど美しい肢体と、感じすぎて泣きじゃくった表情は今でも変わらず、綺麗で、自分だけのものなのだ、と思うほど、優越感を覚える。 そして、その分、日々色気を増していくのだ。 けれど、男を誘うあのセックスの時の 忌々しいクセをつけた張本人が病気で転院してきた際、手術して救った、という事実も、 本人の希望なのだから仕方ない。 こともあろうに、関係を再度持ちたいなどと 持ちかけてるのを聞いてしまった時には、 失敗した、と言って殺してやろうかとも思ったが、仕事に私情を持ち込まない、と翔が言ったのだから仕方ない。 それに、翔は「俺」を選んだ。 自分にトラウマを植えつけた相手にも お優しいことで… とも思ったが、あくまで医者としての判断だ。 その立場を利用してでも殺してやりたいと 思えるほど忌々しい相手であることは変わりない。 けれど、その忌々しいヤツの植え付けた クセが、男を煽る性質の悪い誘い方だから手に負えない。 その誘惑に勝てた試しがない。 必ずと言って理性を焼き切るくらいの 色気に負けるのだ。 たぶん、あの色気に勝てる人間はいないだろう、と言っても過言ではない。 アレで迫られたら、男女問わず押し倒すだろう。 本人に自覚がない、というのが一番怖いところだ。 誰彼構わず他人を惹きつける、あれは人誑しなんてなんて可愛いものじゃない。 『魔性』 というのは、あぁいうのを言うのだろう。 翔が本気になったら、落とせない人間はいないだろう。 大学生時代には『難攻不落』を言われていただけあって、簡単なことでは隙をみせることはない。 他人には必要以上に興味を示さないのが、 翔の良いところでもあり、悪いところでもある。 患者の病巣には必要上の興味を示し、 治療方法などを再確認し、新たなものを 取り入れようとしているが、 ナンパや告白をしてくるような人間には、 全く興味を示さない。 看護師に至っては、家に帰ってからの愚痴が すごいことになる。 「色恋に気を回してる暇があるなら、 もっと頭と手と身体を動かして、 患者をケアするべきだ!! 医者に色目使おうなんて考えるから、 ミスも増えるし、こっちの指示を 忘れたりするんだ!!」 下手な芸能人より、おまえの方が 見た目が良いからだよ、 なんて助言しようものなら、 矛先がこっちに向き始めるから、 案外、面倒臭い面を持ち合わせていることも 最近知った。 『オレがなんで、この学校を受験したか、 勿論、あんたは知らないだろうけど、 オレはあんたに憧れてこの学校を選んだんだ。 奥山敬吾に憧れて、追いかけてきたんだよ!!』 翔の学生時代、あいつの恋人だった男で 俺の親友でもあった柳田徹が亡くなった後、 付き合い始めの頃に言われたその言葉を 思い出すだけで吹き出しそうになる。 ツンデレにもほどがある。 そんな可愛い部分もあるのだと、 他の人間は知らなくてもいいことだし、 知られたいとも思わない。 人情味はあるが、他人に興味を持たない 『難攻不落の王子様』 で居てくれれば、俺が唯一の存在であれば良い。 そんな身勝手なことを考えてしまうが、 つなぎ止めておくには、自分だって努力をしなければ、絶対に手に入らない男であることには変わりない。 明日は互いに休みなことだし、 今夜は徹底的に愛してやろう、と思う。 躰の相性はバッチリなのだから、 気を失うくらい、 焦らして…… 焦らして…… 啼かせて・・・・・ 想像しただけで勃ってきそうだ。

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