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子どもが産まれたからというのがきっかけだろう。前よりもだいぶ行動範囲が広がり、そして、少しずつ外に出る恐怖がなくなっていた。
それは新と真が嬉しそうに、自分のことを引き連れてくれるからという理由が大きい。
とはいえども、自由に外に出られるのは庭までであって、どうしても家の外に出たいのであれば、碧人が悦びそうなことをせねばならず、それを避けたい葵は、用事を碧人に頼むことが大半で、外に行くことがままならない。
今も、家の中といえども、そばには使用人が控えている。
ずっとこの先もこうさればならない罪を背負っているといえども、子ども達のことを考えると、このままにしているわけにはいかない。
「おかーさま! おちば、いっぱいひろったー!」
「まこともー!」
庭先で走り回っていた愛しい子達が息を切らして、両手で抱え込んだ落ち葉を葵人の目の前で降らせてみせた。
視界が一瞬にして、色づいた落ち葉でいっぱいになった。
考えに耽っていたこともあり、呆然と見つめていると、視界が晴れた先で双子が揃って悪戯に笑った。
「おかーさま、びっくりした?」
「え、えぇ、そうですね⋯⋯」
「やったー! だいせーこう!」
ほぼ同時にその場で大きく跳んで、ハイタッチをしていた。
その様子に微笑んだ。
と、その時、新の顔に何かついていることに気づいた。
「新、いらっしゃい」
「んー?」
両手を広げてみせると、新は首を傾げながらも吸い込まれるように腕の中に来てくれた。
「どーしたの?」
「やっぱり。お鼻が汚れてますよ」
着物の袖で拭いてあげると、「きゃー」と可愛らしい声を上げて、胸に顔を埋めた。
愛おしげに柔らかく、自分のように黒い髪を撫でてあげると、「まことはー?」と不満げな声を漏らした。
きっと、新だけ構って拗ねてしまったのだろう。
くすりと笑いつつ、片手を広げてあげると、草履を雨垂れ石の上で脱ぎ、新に負けじとよじ登ってきた。
「あら、真も可愛いほっぺが汚れてますね」
新の時のように拭いてあげると、「ありがとー!」と新と同じように顔を埋めていた。
母である葵人が大好きで、まだまだ甘えたい年頃の二人がとても愛おしくて、二人の気が済むまで頭を撫でてあげた。
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