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第39話
「リサも寂しがっているわ。貴方に会う為に、本気で日本で就職しようとしているみたい。あの子もいじらしいわよね」
「止めてよ。リサは俺にとって妹だからさ」
ルーシーが肩を竦める。
「そうは言っても貴方だって、もうすぐ30歳でしょ? 結婚は考えていないの? 」
「今のところないね」
「誰か付き合っている人はいるの? 」
リサに問われて、夏川はちらっと朝霧を見た。
「こちらの男性を今口説いている真っ最中」
そう言う夏川の頬は少し赤くなっていた。
「嘘でしょ。あなた、ゲイになったの? 」
夏川の告白にときめいていた朝霧は、続くルーシーの言葉にショックを受けた。
「俺がゲイかどうかは分からないけれど、帝のことが好きなんだ」
「だってあなた男性となんて付き合ったことなかったじゃない」
ルーシーの言葉に驚いた朝霧は、肩をびくりと揺らした。
「そうだね。帝は男性では俺が初めて好きになった人だ」
「信じられない」
ルーシーが天を見上げて頭を振った。
朝霧もルーシーと同じ気分だった。
ゲイバーであれだけ馴染んでいた夏川が、ノンケだったなんて朝霧は思いもしなかった。
いや、こいつはどこでも馴染める男だった。
朝霧は裏切られた気分で、夏川を見つめた。
夏川だけが悪いわけではないのは、朝霧だって分かっていた。
夏川は一度だって、朝霧に自分はゲイだとは言わなかった。
ただ朝霧が勝手にそう思い込んでいただけだ。
それでも朝霧は気持ちが地面にめり込みそうなくらいに、落ちこんでしまった。
ルーシーの言葉が、それをダメ押しする。
「リョウ。私は偏見はないけれど、貴方の親友だからはっきり言わせてもらうわ。男同士だとね、子供はできないのよ。私は子供が出来て初めて自分が大人になれた気がしたの。自分より優先したい、庇護すべき存在ができて、あらためて自分がしっかりしなければと思ったわ。本当の意味で自立できたのよ。それに子供に教えられた大切なこともいくつもある。ねえ、リョウ。貴方にもそんな素晴らしい経験をして欲しいのよ」
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