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第47話
マンションの前にタクシーが着くと、朝霧は夏川に引きずり降ろされるようにして歩道に立った。
腕を強く掴まれ、その痛みに朝霧は思わず顔を顰。
そのままマンションのエントランスを通り抜け、2人でエレベーターに乗る。
どうしてこんなことになってしまったのか。
酒に酔っていたせいもあってうまく朝霧の思考はまとまらなかった。
確かに、夏川が朝霧と別れるつもりだったとしても、現時点で2人はセフレの関係を継続中だった。
最初に朝霧は他の男と寝ないことを夏川と約束していた。
その約束を破ったかのように見える行動をしてしまったのは良くなかった。
朝霧が謝罪のため、口を開こうとした時、ちょうどエレベーターが止まる。
また朝霧は腕を強く引かれた。
ベッドの上では散々色々なことをしてきた2人だが、こんな乱暴に扱われたのは初めてだと、朝霧は思った。
たとえ朝霧をいたぶる時でさえ、夏川の行為には優しさがあった。
玄関に入り、このままでは良くないと、朝霧は夏川のスーツを掴んだ。
夏川にはそれが抵抗しているように感じたらしい。
眉を顰め、朝霧を自らの肩に担ぎあげる。
「リョウ、靴、靴」
朝霧も夏川も靴を履いたままだ。
夏川はそんなことどうでもいいというように、そのまま寝室に向かった。
朝霧を乱暴にベッドに降ろす。
「リョウ、俺」
「先週、疲れていたみたいだから、気を使って抱かなかったのに。まさかそれが裏目にでるなんてね」
夏川の声色はゾッとするようほど冷たいものだった。
「一週間抱かなかっただけで、もう帝は男漁りしちゃうんだね。我慢できなかった? 」
夏川の視線が、雰囲気が、恐ろしくて。
朝霧は声を発することができなかった。
ただ震えながら黙って首を振る。
「もしかして俺の体で年下の良さに気付いたから、あいつにも付いて行ったわけ? あいつ俺より背は低そうだったけど、筋肉すごかったもんね。帝はああいうのが好みなんだ。」
朝霧は首を振り続ける。
「なんとか言えよっ」
夏川の怒声が寝室に響き渡った。
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