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第83話
家の裏手のバーベキュー場に着くと、朝霧に気付いた遠田が走り寄って来る。
「朝霧さん。寝てなくて大丈夫なんですか? 」
「いや、もうすっかり。ご心配をおかけしてすみません」
「ただの車酔いだろ。そんなに騒がなくたって平気だよ」
夏川はそう言い放つと、バーベキューのコンロに近づいていく。
そんな夏川を唖然とした表情で遠田が見つめる。
「すみません」
朝霧が謝るのもおかしな話だが、つい頭を下げてしまう。
「いえ、リョウっていつもニコニコしてるから、ああやって不機嫌なところを見るのが初めてで……驚いちゃった」
遠田は近くにあった大きなクーラーボックスから缶ビールを取りだした。
「体調に問題がないならいかがですか? 」
「ありがとうございます」
朝霧はプルタブを開け、一気に半分ほど飲んだ。
すきっ腹で飲酒したせいでくらりとし、大きく息を吐きだす。
向こうから真島が戻って来るのが見えた朝霧は、先ほどのことを謝りに行こうと足を踏み出した。
視線に気付いたのか、真島が朝霧を見つめる。
途端に真島は苦笑すると小さく首を振り、朝霧から離れるように、コンロの向こう側へと歩いていってしまった。
「何かあったんですか? 」
真島の態度を不審に思ったのか、遠田が朝霧の顔を覗きこんだ。
「ちょっと夏川と俺の喧嘩に、猛さんを巻き込んでしまって」
細かいことは話たくなくて、朝霧は言葉を濁した。
「ああ、だからリョウも不機嫌なんですね。さっきまでリョウが一番朝霧さんの心配をしていたのに変だなって思ったんです。朝霧さんがもし夕方になっても気分が悪そうなら、近くの病院で診てもらうって言ってたぐらいで」
「そうなんですか」
心配してくれていたことを知って、朝霧は先ほどの自分の夏川への態度を恥ずかしく思った。
夏川がそんなに心配して、探してくれていたのなら、真島と自分がふざけ合っているように見える光景にでくわして、気分が悪くなるのも分かる。
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