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第217話
朝霧の意識がふっと浮上した。
体がゆらゆら揺れている。
どうやら抱えられて運ばれている最中のようだった。
風呂に入れてもらえたのか、朝霧はバスローブを身につけていた。
自分の顔のすぐ傍に、同じバスローブを身につけた逞しい胸板。
顔を上げると、夏川と目が合い、微笑まれる。
優しくベッドに降ろされ、夏川に抱きしめられた。
「お風呂入れてくれたんだ? 」
「うん。体どろどろになっちゃったからね。髪は帝が起きちゃいそうだったから、洗ってないけど」
「ありがと」
朝霧は夏川の体にすり寄った。夏川が朝霧の体をぎゅっと抱えなおす。
「音羽の前で俺の物なんて言っちゃってごめんね。音羽を牽制するためだったけど、俺、帝のことを物だなんて思ったことないから」
夏川が優しく朝霧の髪を撫でる。
「うん、分かってる。それに俺、リョウにそう言って貰えて実は結構、嬉しかったし」
「そっか」
心地よい疲労感に朝霧の瞼が重くなってくる。
それでもどうしても夏川に聞きたいことがあって、朝霧は口を開いた。
「音羽のその……性器のこと、どうして知ってたんだ」
夏川は朝霧を抱えると、自分の胸の上に乗せた。
「知ってたわけじゃないよ。ただ帝にあれだけ執着しているのに、抱かないのはおかしいなって。何かあると思ってさっき直感で脱げって言ったんだ。音羽は小さいのがそうとうコンプレックスなんだろうね。そのストレスやコンプレックスを帝や他の子供たちにぶつけるなんて最低だけど、俺もあれだったら落ち込む気持ちは男として分かる」
夏川が己の下半身を見つめ、息を吐く。
「音羽が子供が好きだったのって……自分のコンプレックスのせいだったのかな」
「さあ、大人相手よりは馬鹿にされないって思ったのかもね。もう音羽のことはいいよ。実家のことがあるから完璧に忘れるのは無理だろうけど、とりあえず今夜はさ」
「うん」
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