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番外編 諒太さん、欲求不満です(4)★
「だ、大地っ、おねがいだから、イかせて……ああっ、おねがいだからあっ……」
「もう我慢できない?」
「んっ、ん、おねがっ……おちんちんイかせて――せーえき、びゅーってしたいのおっ!」
空っぽの頭で必死になって懇願する。もはや自分が何を言っているかもわかっていなかった。
「っ、ほんっとに煽り上手」
橘は歯を噛み締めるように苦笑を浮かべ、律動をいっそう激しいものにさせる。願いが通じたのか、戒められていた手がようやく離れていった。
「あ、ああぁぁっ!」
途端、堰を切ったように白濁が溢れ出す。抑制されていたものが一気に解放され、諒太は歓喜の声を上げながら断続的に精を吐き出し続けた。
「出る……っ」
追って、橘のものがドクンッと脈打つ感覚。低い呻き声が聞こえ、熱い飛沫が体内に注ぎ込まれていく。
「ん、ぁ……ナカ、あつ……」
あまりの熱と量に頭がくらくらしてしまうのを感じた。
橘の欲望をきゅうっと絞り上げるようにして最後の一滴まで搾り取ると、諒太はくったりとして橘に身を預ける。
(あ、出ちゃう……)
萎えたものが静かに抜け落ち、栓を失ったそこから、とろぉ……っと精液が流れ落ちていく。
そんななか、橘が優しく抱きしめてくれた。体は汗や精液でベタついているというのに、少しも嫌ではなくて、むしろ心地いいくらいだった。
そうしてしばらく余韻に浸ったあと、橘がおもむろに口を開く。
「諒太さん、さっきみたいなの言い慣れてるでしょ」
「え、なにが?」
さっき、と言われても無我夢中だったからわからない。何のことかと首を傾げていたら、橘は気まずげに目線を逸らした。
「わかんないならいいです。けど、諒太さんってやっぱ経験豊富っつーか……冷静になってみると、たまに複雑になるっつーか」
「ええ、なんだよそれ。まさか妬いてるの?」
「……少しだけ」
素直に肯定されて面食らってしまう。
いつもクールな彼がこんなふうに嫉妬してくれるだなんて、なんだか可愛く思えてならない。諒太はクスッと笑うと、橘の頭を撫でながら言った。
「大地。こうやって心から誰かを求めるのは――君が初めてだよ」
が、返事がない。「あれ?」と思って見てみると、橘はすでに夢の中へ旅立っていた。
(えっ、うそ……せっかくいいこと言ってたのにっ!?)
などと思うものの、疲れているところを無理させた自覚はあるので文句は言えない。それに、眠っている顔は穏やかでとても幸せそうだった。
「……ま、いくらだって言う機会はあるしな」
先ほどの言葉は本人に届かなかったかもしれない。けれど、そのときは何度だって言うまでだ。橘は特別な相手なのだ、と。
諒太はフッと微笑むと、起こさないよう慎重に腕の中から抜け出した。
それから後処理を済ませて、おやすみ、と去り際に口づけを落とす。すると、橘の口元が微かに綻んだ気がして、また胸がきゅんとしたのだった。
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