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第4話 とろけてく……

「あ、あぁ……っ」  ど、しよ。  指、入ってる。 「あぁっ……」  すごい。 「汰由」 「あっ」  中に塗られたものをただ掻き出してもらっているだけなのに。 「くぅ……ン」  声が溢れて止まらない。 「あっ」 「汰由」 「ひゃ、ぅっ」  義信さんの指が中をまさぐると、声が出ちゃう。 「平気だよ。汰由」 「ン、ん」  声。  また溢れちゃうから、タイルにできるだけくっついて、自分でする時と全然違う、甘ったるい自分の声をどうにかして閉じ込めようと身体を小さく縮める。 「ひゃっ……ぅ」  その瞬間、そこを、中のあそこを撫でられて、甘い悲鳴が思わず溢れてバスルームに響いた。 「あ、あの、ごめんなさいっ」 「いいよ。大丈夫」  義信さんはただ掻き出してくれてるだけなのに、なのに、俺。 「っ」  きっとこんなだから、あんなアルバイトをしようとしてたんだって呆れられてる。こっちは助けてあげようとしてるのにって。  何、考えてるんだって。  でも、熱くて。  義信さんの指は長くて、その。すごく。 「ごめんね。できるだけ中をむやみに刺激しないようにしてるんだけど」 「ぁ……」 「多分、ただのローションじゃないんだと思う。温感作用とか、かな。とても熱いから」 「ごめっ」 「平気。気持ちいい?」  きもち、いい。  こんな、だなんて。  自分の指じゃないと、こんなにいい、なんて。  でも義信さんにしてみたら、これはセックスじゃない。ただの手助け。  俺が一人でまるでセックスみたいに気持ち良くなっているだけ。  恥ずかしい。  羞恥心で、頬が熱くなって、お尻の孔が義信さんの指をキュッと締め付けてしまった。そしてそのことにもまた恥ずかしくてどうにかなってしまいそうで、また身体がキュって。 「汰由は気持ち良くなるのが上手だ。出そうなら無理に我慢しなくていいよ」  恥ずかしいのに。こんな素敵な名前の素敵な人にこんなことさせて申し訳ないって思うのに。もっとって。 「生理現象なだけなんだから」  もっと、されたいって。  中から掻き出してくれる指に腰がくねって強請ってしまいそうになる。そこじゃなくて、もっと、ここをたくさん可愛がってって、今にも振りたくってしまいそうに。 「あっ」  義信さんの指に合わせて、中を可愛がられたくて。タイルに縋りつきながら一生懸命堪えてた。 「ン、あっ」  だって、そんなの、ダメでしょう?  義信さんはそんなつもりで俺にしてくれてるわけじゃないのに。一人で勝手に、そんなのはしたなくて、嫌われてしまう。 「ン、んんんっ」 「痛くはない?」 「な、い、ですっ」  なのに、優しくしてくれる義信さんの指に今、そこを、前立腺のところを撫でられたらって、思ってしまう。  この指に中を可愛がってもらえたらどんなだろうって。 「汰由? 平気? 一回流そうか」  そう言って、指がずるりと抜けかけた時、すごく、すごく。 「ぅ、ンンンンっ」  気持ち、良くて。  たまらなくて。  まだ抜いて欲しくなくて。  つい身体が跳ねてしまった。 「あっン」  その拍子に、シャワーのお湯が義信さんの方へ向いてしまって。 「! ごめっ」  彼を濡らしてしまった。  たくさん迷惑をかけているのに、また、もっと迷惑をかけてしまったって、慌てて振り返って、ごめんなさいって謝ろうと……。 「いや……いいよ。大丈夫? 痛くなかった」  わ。 「痛く、ない……です」  すごい。 「あの、義信さん」 「ごめん。何もしないから、安心して」 「……ぁ」  たくさん迷惑をかけてたくさん謝った俺に、今度は義信さんが、苦笑いを溢しながら小さく謝って。濡れてしまった少し長いくクセのある髪をかき上げた。  かっこいい大人の男。  そんな人が、今、俺と一緒にいて。  そこを。 「あ……義信さんの」  だって、そこ。 「汰由の声、澄んでいて綺麗な声だって言ったろ?」  反応、してくれてる。 「……ぁ、の」  喉奥、熱い。  何も飲まされてはいないはずなのに。喉奥が熱くてたまらなくて。唾と一緒にそのじんわりと身体の奥まで染み込んで広がっていく熱をぐっと飲んだ。 「汰由?」 「ダメ、ですか?」  その足元にひざまづいて。シャワーのお湯が俺の肩に当たって、跳ねて、顔も髪もびしょ濡れになりながら、そっと、義信さんに触れた。 「助けてもらったの、嬉しかった」  こんな優しくてかっこいい人に。 「だから、あの……お礼」 「……」 「したい、んです」  反応してもらえたの。興奮してもらえたの、嬉しかった。 「ダメ、ですか?」 「っ」 「恋人、いますか?」  いなかったら、させて欲しい。でもいるかな。義信さんすごいかっこいいし。 「いないよ」  やった。いないんだ。すごい、嬉しい。恋人がいないなら、今、ここで俺がしても大丈夫かなって思った。ここで、この人に触れても。  だから、そっとその前の硬く張り詰めている熱をタオル越しに撫でた。 「ダメ?」  撫でて、そっと義信さんを見上げた。  義信さんは俺の方をじっと見つめてて、その髪の毛の先から滴り落ちた雫が俺の頬にぽたりと落ちた。  落ちて、それを義信さんの指が拭ってくれる。長い指にそっと撫でられて、たまらなくて、その指が唇に触れてくれると震えるほど気持ちいいから。口を開けた。開けて、その指が口の中も撫でたから。 「……ぁ」  自分から咥えた。 「ン」  舌を撫でてくれる長い指。  気持ち、ぃ。 「んん」  自分の舌をその指に絡みつかせて、しゃぶりながら頭を前後に動かした。よく知らない人。知ってるのは名前だけ。さっきのお客さんと大差ない、何も知らない人なのに。  俺はこの人のことをすごくすごく欲しくて。すごく、触りたくて。 「義信さんの……したい……ぁ」  そっと触れた。  そっと。 「ぁ……む……」  口に、咥えた。  初めて、男の人に、フェラ……した。

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