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30.*****

 僕は何もかもを諦め、奏斗さんに手首を縛られる。光沢のあるワインレッドのネクタイ。奏斗さんが昔から好んで身につけていた色だ。血の染みがイイ色になるんだと言っていた。  藻掻く事さえも許さないくらい、ギチギチに縛られる。機嫌が悪いとこうなのだ。見える所に痕をつけられるのは困る。けれど、そんなことを言えば首や顔にもつけられかねない。  されるがまま、僕が抵抗もせずに縛られていると、芯が奏斗さんに蹴りかかった。奏斗さんはひょいと避ける。あわや、頬に直撃するところだった。 「っぶね。へぇ····、まだ折れてないんだ。おっけ、先に芯クンから壊しちゃお。お前はそこで見てなね。大事な芯クンが俺に堕ちてくとこ♡」  奏斗さんは、芯の脚を縛り身動きを取れなくする。次に僕を縛り終えると、芯を開脚した状態に縛り直した。  手は後ろ手に、さっきよりも雁字搦めに縛り、口にも縄を掛ける。そして、四つ這いにして一切抵抗できなくなった芯のお尻を鷲掴み、一息に根元まで突き挿した。言葉にならない悲鳴をあげる芯。余程痛いのだろう。涙とヨダレが溢れ、二突き目には嘔吐してしまった。  縄を食いしばり、声を我慢する芯と目が合う。気がつくと、僕のほうが涙をポロポロ零していた。 「センセ(へんへ)··泣くなって(ひゃふはっへ)····。(ほぇ)····大丈夫だから(はいひょーふはひゃや)」  大丈夫なわけがないじゃないか。そんな言葉さえ返せないほど、唇の震えが止まらない。  奏斗さんは縄を手綱(たづな)の様に握り、芯の上体を引き起こす。奥を深く抉られて辛いだろう。それでも、芯は僕に声を聞かせないよう抑える。  奏斗さんは芯を快楽漬けにし、意識が飛ぶと痛みを与えて起こす。それを絶妙に繰り返し、芯のメンタルを削ってゆく。  強気の芯も、流石に限界が近いようだ。目が虚ろになり、僕には見せなかった表情を見せ始める。  完全に蕩けきった顔だ。僕だって、ここまで緩んだ顔を見た事はない。痛みを伴う快楽に表情(かお)を歪め、苦しみから逃れようと唸る。芯は、少しでも奏斗さんの突きから逃れようと、身を(よじ)って上へ上へと逃げる。  けれど、そんな抵抗を奏斗さんは許さない。芯の腰を持って、思い切り引き寄せる。芯の腹の奥がぐちゅっと潰れる音が聞こえた。実際には聞こえていないが、僕の脳にはハッキリと伝わった。  その瞬間、僕の中で感情が途切れた。腸が煮えくり返るような腹立たしさも、逆らうと何をされるか分からない恐怖心も、一度(ひとたび)静かになると感情が音を失くす。 「奏斗さん、それ以上芯を弄ばないでください。僕が貴方を満足させますから····、もう··芯を離して」  僕は、無感情に奏斗さんを睨む。今更だけど、芯の心が崩れ堕ちる前に僕が守りたい。  けれど、奏斗さんは僕の言葉になど耳を貸さない。それどころか、鞄から細く長いチューブを取り出した。片端にはポンプがついている。あの中には食塩水が入っているはずだ。僕も何度かされた事がある。  尿道から挿し込み、あのポンプに入っている液を全て膀胱に注がれるのだ。限界まで我慢させ、耐えきれず漏らすのを嘲笑いながら喉奥を犯す。2度目は、身体が狂うまでブジーを挿して栓をされる。まさか、あれを芯にするつもりだろうか。  何をされるか想像もつかないであろう芯は、怯えながら奏斗さんの様子を窺っている。僕は、慌てて奏斗さんを制止する。 「それはっ! 本当にやめてあげてください。僕が····僕にシてください····」  なんとか声を出せるようになったとて、我が身を差し出すくらいしかできない。それでさえ無視されるのだから、残る手段はひとつ。  芯の前では、これ以上の醜態を晒したくはなかったのだけど、そんな悠長な事を言っていられる状況ではない。僕は、這って奏斗さんに近寄り、縋りつくように見上げて言う。 「奏斗さん、僕をイジメてください。昔みたいに····容赦なく使ってください」  そう言って、僕は奏斗さんのモノを咥えようとした。それで、芯の代わりを担えるのなら。  まさにその時、芯が僕を蹴るように背中を押した。縛られているのに、なんて器用なんだ。 「何、ふざけた事ばっか··シようとしてんだよ! 先生、しっかりしろよ」 「芯クンはメンタル強いねぇ。君みたいな子折るの、俺(だーい)好き♡ ····だからさ、見てろよ。お前の大好きな先生が、俺にぐっちゃぐちゃに犯されるところ」  奏斗さんは、自分の唇を指でゆっくりと撫でながら、芯を見下ろして高圧的に言葉を放つ。威勢の良かった芯の怯えた顔は堪らない。  だけど、芯の目はまだ死んでいない。僕だって、犯されようが壊されようが、もう心を持っていかれたりはしない。  奏斗さんは芯をベッドから降ろし、縛られたままの状態でロフトへ続く梯子(はしご)に繋げた。 「クッソ! イカレ野郎!! (ほど)けよっ!!」 「あっはは、ホント元気だねぇ。そこで指咥えて見てな。····あ、咥えらんないだったね〜」  奏斗さんは芯の制止を無視して、何の躊躇いもなく僕の喉にねじ込んだ。 「チッ····俺のだぞ! 勝手に触ってんじゃねぇよ!!」 「ハァァァッ····、俺の俺のってうるせぇな。芯ク〜ン、コイツはさぁ··今でも俺のだよ。なぁ、(れーい)♡」  耳に劈く甘い響き。視界がチカッと弾け、途端に気道が絞まる。ベッドに落ちた僕は躯体を丸め、口を大きく開いて空気を吸い込もうと足掻く。  奏斗さんは呼吸のできない僕の口に、完勃ちしたペニスを再びねじ込ませる。どちらにしても息ができない。酸欠で意識が朦朧とする。  あの頃の、絶対的に服従していた感覚が蘇り、脳が溶けてゆく浮遊感で達してしまった。

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