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35.###

 俺まで、先生と一緒に堕とされるわけにはいかない。と、思っていたのが数十分前。俺は見事に堕とされた。  別に、奏斗サンを好きになったわけじゃない。けど、逆らえない事はよく分かった。逆らうとやべぇ。  2本突っ込んで、2本とも結腸にねじ込みそうな勢いで突き潰された。腹もケツも全部痛てぇ。  先生は俺んナカでイクわ噴くわ好き放題だし、奏斗サンはアホみたいな量の射精するし。俺の腹んナカぐっちゃぐちゃ。  突かれる度、腹に響く衝撃が強すぎて、胃が痙攣するくらい何回も吐いた。それでも、先生の顔にかけんのは避けたんだから褒めてほしい。  ベッドのヘリに座り、煙草を吸う奏斗サン。煙に目を細めて、悠々と賢者タイムを満喫してる。その足の下には先生の頭がある。どういう情緒してんだよ。  鬼畜だとかクソドSだとか言われてた俺だって、事後に女の子の頭踏みながら呆けた事なんかない。因みに、先生にされた事も無い。  けど、奏斗サンのする事に意見する事はできない。奏斗サンの逆鱗に触れたら、死ぬほど(いて)ぇか死ぬイかされるかだ。どっちももう無理。  俺さっき、泡吹いて気絶してやっと解放されたんだもん。縄解く時に、『二度と歯向かわない』って約束させられたし。それは多分、“先生に何をシても”って意味も含まれてるんだと思う。  先生を傷つけないなら従うって言ったら、生意気言うなって笑いながらビンタされた。それも、ケツが疼くような甘いやつ。けど、目は笑ってねぇの。すげぇ怖かった。  なのに、すぐにトロンてしちまって、口が勝手に『はい』って言いやがった。脳と身体が生き別れたみたいで気持ち(わり)ぃ。  ベッドの隅に座って、壁に身を預ける。正直、起き上がってんのも辛い。蹲って吐きたい。けど、ここで弱みを見せるわけにはいかねぇよな。 「それ、先生大丈夫なの? 薬って、危ないヤツじゃねぇの?」 「俺ねぇ、コイツにはそういうの飲ませないの。そんなキツいのなくても、コイツは身体が覚えてるしね」 「······知らねぇよ」 「芯クンはホント、メンタル強いねぇ。ビックリしたよ。俺に犯された後にそんな生意気な口聞いてんの、芯クンが初めて」  煙草の煙を俺に吹き掛けながら、どこか嬉しそうに言った。新しい玩具を見つけたクソガキの顔だ。  けど次の瞬間、大人の顔になってスッと瞼を落とし、先生に視線をやりながら言った。 「····先生のおかげ?」 「何が?」 「メンタル折れないのって、先生を守らなきゃ〜とか思ってるから?」 「は? 単純に俺が(つえ)ぇからだわ。····先生は守りてぇけど、ガキの俺じゃなんもできなかったし」  犯されてる先生を、ちんこ熱くしながら見てる事しかできなかったんだ。喧嘩が強くても、メンタルが強くても、何の意味もないと思い知った。  情けねぇ。俺の心を何より支えたのは、そこから這い上がりたいって気持ちだった。先生を守る為····ってのも、たぶん含まれてるけど。こんな理不尽な男に負けない強さが欲しい。  だいたい恋人つったって、マジで先生に惚れたとかじゃない。ましてや、愛してるとか(さみ)ぃ言葉で耳(あった)めたって、理解できねぇ感情で心まで埋まるはずねぇじゃん。  そもそも俺は、先生をどう思ってるんだろ。1つ言えんのは、愛してはないって事。“愛”っつぅのがよく分かんねぇもん。  けど、大切にしたいとは思うし、お人好しでバカだから放っとけない。可愛いとこもある。もう、都合がいいだけのヤツだとは思ってない。好き··なんだとは思う。  俺、先生の事好きなんだ。ドコがとか、ナニがって聞かれたら言葉にできねぇけど、多分これは間違いない。好きだ。 「なんか晴れ晴れした顔してんねぇ。腹立つくらい」 「ほっとけ。つぅかいい加減その足退けろよ。人の頭踏むって何考えてんの?」  さっきまで怖いと思ってた奏斗サンに意見した。実際何されんのかわかんねぇし、今もすげぇ怖い。  けど、俺の好きな人が踏まれてんのに、黙ってらんないじゃん。  内心めちゃくちゃビビったけど、奏斗サンはあっさり足を退かした。ビビり損だわ。 「芯クンさ、コイツの事好きなの? 愛してんの?」  奏斗サンは、2本目の煙草に火をつけながら聞く。少し俯いて、火の周りに手を添えてんのがすげぇ色っぽい。睫毛が火の灯りに揺れてる。 「ねぇ、聞いてる?」  思わず見惚れてた。だって、すげぇ綺麗なんだもん。 「ん? ··あぁ、好きだよ。愛してるかは····分かんねぇ。て言うか、“愛してる”ってなんなのかが分かんねぇの」 「へぇ〜。お子ちゃま····」  後ろに手ぇついたと思ったらふんぞり返って、急にマウントを取られた感じだ。腹立つな。 「だったらアンタはどうなんだよ。先生のことおもちゃ扱いしてっけど、実は未練ダラダラなんじゃん? んなに先生のことアイシテたんかよ」  奏斗サンの雰囲気が一転した。煙草を人差し指と中指で挟み、一吸いして口から離した。大きく煙を吐き、続いて言葉を落とす。俺を睨み上げた目が(こえ)ぇ。 「愛してるよ。俺はこいつ以外、愛せなかった」  その言葉を聞いた途端、背筋をぶわわっと荒れた感覚が這い上がっていった。

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