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奏斗サンが言う“愛してる”って何?
散々酷い扱いして、挙句捨ててったくせに。どこに愛があったんだよ。
「なんで先生のこと、捨てたの」
「捨てたんじゃないよ。コイツが俺から離れただけ」
「先生は捨てられたと思ってるよ」
「俺から連絡しなくなってからさぁ、一回もコイツから連絡ねぇの。いつも、俺からの一方通行だったんだよ」
切なそうな顔してっけど、勝手な事しか言ってなくね? ただの我儘じゃん。
けどまぁなるほど、押してダメなら引いてみろってやつを試したって事か。なんだ、奏斗サンも意外と人間っぽいトコあんじゃん。
やる事全部イカれてんのかと思ってたけど、ちょっとは可愛いとこあるんだ。それを知れば、こんな鬼畜外道な無駄イケメンも同じ人間に思えてきた。
「バカじゃん····。つぅか、ンなに想ってんのになんで酷い事ばっかすんの?」
「性癖。て言うか、大事にしてンじゃん」
あぁ、普通に変態だったわ。んで、感覚も狂ってる。ちょっと可愛いとこあんじゃんって思った俺がアホだった。
アレを性癖で片付けられるとか、俺も先生も可哀想すぎるって。つぅか、どこをどう見て大事にしてるって思えばいいんだよ。
先生が目を覚まさない。奏斗サンは、少しキツめに犯したからじゃないかと言う。久しぶりだったし、薬も効いてたし、何より俺の前だったからだとか言ってた。最後のは意味が分かんねぇけど。
我が物顔で、冷蔵庫から水を持ってくる。俺に投げ渡すと、口に水を含んで先生の前髪を掴んで持ち上げた。で、強引に口移しで飲ませる。それ、溺れねぇ?
俺も喉が引っ付くくらい乾いてたから、凄い勢いで500mlを飲み干した。先生は、多分殆ど飲めてない。後でちゃんとあげよ。
奏斗サンが、残った水を容赦なく頭からぶっ掛けると、先生は溺れながら目を覚ました。あの人、ここを風呂場と勘違いしてねぇか。汚し方がエグいんだよ。誰が片付けると思ってんだ。
「ぷはぁっ····ぁ····んぇ··?」
パニクっている先生に、状況を説明する。途中から記憶が曖昧みたいだけど、心に受けたダメージは充分そうだ。
「芯····」
「大丈夫だよ、先生。俺、なんも見てない。見てないからさ、ンな顔すんなよ」
他に言葉が思いつかなかった俺は、くだらない嘘で気休めを言った。自分でもよく分かんないけど、女の子をオトすような甘いセリフなんかで、先生をテキトーに慰めたくなかった。
ちゃんと笑ってやれてたかな····。
先生はハッとして、奏斗さんを見る。全裸で、水のペットボトルを片手に煙草を吸っている。フルチンとは思えないくらい、堂々としたもんだ。多分、羞恥心とか死んでんだろうな。
先生を見下ろして、にっこり笑顔で『おはよう』と言った。先生じゃなくても怖がるわ。
「ひぅ··ぁ、奏斗さん····おはようございます」
「ねーぇ、そんなにビビんないでよ」
「自業自得だろ」
悪態をつく俺を無視して、先生に寄り添う俺を押し退けて、奏斗サンは先生の前に片膝を着いた。そして、ゆっくりと頬に手を添える。
時間が止まったみたいに、そっと唇を重ねた。舌も絡めず、食むだけの優しいキス。キョトンとしてる先生が面白い。けど、すげぇムカつく。
ほんの数秒だったそれは、何十秒にも感じるほど濃厚だった。2人の唇が離れ、そのまま先生の頭を引き寄せた。胸に抱き締め匂いを嗅がせると、今度は耳元で強く甘い囁きを残す。
「お前は俺の物だよ。もう二度と離さない。俺の··零 ♡」
また息ができなくなって、喉を押さえて蹲る先生。俺は慌てて駆け寄り、背中をさすって呼びかける。
その間に奏斗サンは、ちゃっちゃと服を整える。『また来るね』と言うと、どっさりとあった荷物を持って帰って行った。嘘だろオイ。
上手く息のできない先生。見かねて、キスで落ち着かせる。こんなんで落ち着くかは知らねぇけど。あ、ちょっと煙草の味がする。
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