37 / 61

37.###

 落ち着いた先生に、よたよたとホットミルクを入れてやった。ダメージは先生のほうがデカいだろうから、流石に労わってやらねぇと。なんて思ったんだ。  ちょい熱めのミルクを赤ちゃんみたいにちまちま啜って、涙ぐんだ目で俺を見る。そんで、震えた声で聞く。 「僕のこと、嫌いにならないの?」 「は? なんねぇよ」 「····なんで?」 「なんでって····、蕩けてる先生が可愛かったから?」 「······へ?」  そりゃ意味わかんねぇよな。俺だって意味わかんねぇもん。でも、奏斗サンに犯されてる先生見てたら、可愛いと思ったんだからしょうがねぇじゃん。  俺をイジメて犯してる先生とは真逆の、甘く蕩けた先生。多分アレだ、ギャップ萌え。  そう説明したら、納得しきれない顔で頷いてた。 「ねぇ芯、お尻は大丈夫?」 「(いて)ぇよ」 「見せて」  先生の必死そうな顔見たら断れなくて、しょうがないから見せてやった。痛みはあるけど、どうなってんのか分かんねぇから不安ではある。 「少し切れてる。薬、塗っとこうね」  そりゃあんなの2本も突っ込まれたら切れるっつぅの。それは覚悟してたけど、それよりも変な欲望が芽生えてる。 「うん。··あ、のさ、先生が嫌じゃなかったら··で、いいんだけど、薬塗る前にさ、えっと··舐めてくれる? ちょっとだけ、その··消毒··的な····」  先生は目を丸くして、少し涙を滲ませて舐め始めた。嫌がんねぇんだ。俺自身、なんでンなこと言ったのかわかんねぇ。けど多分、先生に我儘を言ってみたくなったんだと思う。  つぅか、ちょっとでいいつったのに、マジで執拗い。バカみたいに犯されたんだから、先生こそ身体労れよな。  一心不乱に舐めてる先生見てると、気持ちがガッと上がって、思わず口が滑った。これはマジで言うつもりなかったんだけどな。 「俺さ、先生のこと好き····みたい」  さっきより目丸くして、目玉落ちんじゃねぇのってくらいパチクリする先生。また涙浮かべて、子供みたいに泣いてやんの。  まだ頭緩い感じからして、薬が残ってんだろうとは思う。けど、こういう素直な先生も悪くないと思っちゃったんだよな····。  ボヤッとした先生と風呂に入って、ケツに薬塗ってもらって、初めて手を繋いで向かい合ってベッドに入る。何だこれ、すげぇ恥ずかしいんだけど、妙に落ち着くのが不思議。  慣れたのか、好きだと認めたからなのか、こういう甘ったるさを気持ち悪いと思わなくなった。けど、先生はまだ信じらんねぇみたい。 「実はね、色々見られて嫌われたと思ってたんだ。それなのに····芯、本当に僕のこと好きなの?」 「んー? たぶん」 「たぶん····」  俺から“好き”だとか、女の子にも言ったことないわ。聞かれたこともないけど。マジで萎える。なんで初めてが野郎なんだよ。  俺は心ン中で悪態をつきながらも、また本音を漏らしてしまう。だって、先生があんまりヘコんだ顔すっから。  俺のクソみたいな自尊心で、先生にそんな顔をさせたいわけじゃない。とにかく今は、言ってやんなくちゃって思ったんだ。 「····はぁ。好きだよ」  先生の胸に埋もれて顔を隠す。先生はまだなんか喋ってたけど、俺だって犯されまくってヘトヘトなんだって。  だから、もう寝かせろよ····。  俺は空返事をしながら、あんな事の後なのに、先生の腕ん中ですげぇ落ち着いて眠った。先生の匂い、ちょっと好きかも──。  翌朝、トーストのいい匂いで目が覚める。そうか、今日休みなんだ。良かった。  2人で静かに朝メシを食って、ちょっとだけ奏斗サンの話をする。  あの人は、本気で俺ら2人を飼うつもりなんだろう。本命(狙い)は先生で、俺はついでなんだろうけど。  あの口振りから察するに、マジでまた来るっぽい。それも、そんな遠くないうちに。  とりあえず困ってんのは、対策の立てようがない事。鍵なんか替えたところで、どうせすぐに合鍵作られるだろうし。多分マジで無意味。  つぅか、奏斗サンが『開けろ』って言ったら、先生は開けちゃうんだろうな。俺だって、凄まれたら開けねぇ自信はない。  どんな対策したって攻略されそうだし、何を危惧したところで全部現実になるんだろう。考えるだけ無駄だってのが、今確実に分かる事。  はぁ····、今度来た時もまた犯されるんだろうな。半ば諦めモードだわ。  先生は隙さえありゃ謝ってばっかだし、マジで埒が明かねぇ。しばらく、向こうの出方を見るしかなさそうだな。

ともだちにシェアしよう!