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銀花姫 6

* 落ち着け。 オレ、落ち着け。 見たことのない雪の色っぽい仕草と、聞いたこともない雪の甘い声に、軽い眩暈と一気に溢れ出す性欲が暴走しそうになるのを、オレは必死で押し留めて平静を装って、何度も深く息を吐き出した。 そんなオレを見て雪が慌てたように、いきなりしゃべりだす。 狼狽(うろた)えた瞳が大きく開かれて、縋(すが)るように赦(ゆる)しを乞(こ)うように、目の縁(ふち)が潤んでいた。 「あの・・・違くて・・・猛のしたいようにしてくれていいからっ・・・!ボクは大丈夫だから・・・何されても平気だから・・・だから・・・ごめんなさい・・・」 「なに謝ってんだよ。別に怒ってなんかいないだろ?」 「だって・・・溜息・・・ボクまた変なこと言っちゃ」 「違う!」 雪の言葉を遮(さえぎ)るように、オレは少し声を荒げた。 オレが雪の言葉に呆れて、雪の行動に呆れて溜息をついたと思ったのがわかったから。 雪はいつもそうだ。 いつもオレのちょっとした仕草に過敏(かびん)に反応する。 もともと人の顔色を伺って波風立てないようにする性格だからか。 でも時々こっちがびっくりするくらい無頓着(むとんちゃく)なことを言ったりするから、慌てることもあるんだが。 いつもこうして遠慮するのが雪の悪い癖だ。 学生時代の頃だって、オレが友達作ってそいつと遊んだりしていると、雪は遠慮してオレから離れて行って。オレは雪が離れるのが嫌だったから、いつも通り話しかけたし、一緒に登下校したり、雪の部屋に押しかけたりして、関係が終わらないように雪の側にいた。 生まれた時からずっとずっと一緒にいて、ずっとずっと好きで堪(たま)らなくて、誰にも譲るつもりなんかなかった。 だから、誰かに攫(さら)われないように、ずっと監視していた。 自分の親も、雪のご両親も巻き込んで、オレと雪が一緒にいるのが普通だと思わせるために、色々と裏で画策(かくさく)してきた。 そんなオレが。 ここまで、ずっとずっとずっとずっと執着しているオレが。 雪に何をされても言われても迷惑なんて思わないし、むしろ迷惑かけて欲しいし、オレに迷惑かけるのが当たり前くらいに思って欲しい。 それでも、これだけ長く一緒にいても、そんな風に思えない雪が、好きなんだ。 だから、オレが理性を繋ぎ止めるために吐いた息に、雪が勘違いしているのがわかったから、恥ずかしいから言いたくなかったことまで、言わなきゃいけなくなる。 「そうじゃない・・・違くて・・・お前があんまり可愛いこと言うから!こっちは理性保つのに必死なんだよ!」 「ふぇ・・・?」 「オレ以外にそういうことするなよ。絶対に!」 雪の腕を掴んで顔から引き剥がして、ベットに押し付けると、オレはきょとんとした表情の雪の額にキスをして、頬にキスをして、そのまま首筋に移動して、綺麗な鎖骨に舌を這わせる。 「ふぁ・・・んっ・・・」 雪の白い肌に、赤い痕(あと)を残す。 オレのものだという、証(あかし)を。 誰にも触れさせないし、見せることも許さない。 雪の腕から手を放して、邪魔な雪のシャツのボタンを次々と外して、自分のTシャツも脱ぎ捨てる。 真っ白な雪の体を見るのも久しぶりだし、胸の中央にある桜色の突起が可愛くて、脇腹から腰をそっと撫ぜながらその突起に舌を這わせた。 小さなそれを舌で包み込むように舐めてから、先で突くように転がすと、雪が可愛い声をあげながら、体を捩(よじ)って逃げようとする。 「やだったけるぅ・・・やぁ・・・」 少し高い可愛らしい声を、聞いたことのない濡れた声にして、雪の体がビクビクと反応している。 気持ちがいいのか浮いた雪の腰に腕を回して持ち上げると、オレは履いていた雪のズボンと下着を一気に引き下ろしていた。 「やぁっ!!!」 いきなり下半身を露(あらわ)にされて恥ずかしいのか、雪が悲鳴を上げながらオレの腕から逃れようと、暴れる。 白魚のように細い長い腕が、オレの胸を一生懸命押しのけようとするけど、オレはもちろんそんなことでは微動だにしない。 仕方なく雪の腕を掴んで、体を押さえつけてのしかかって、怖がっている雪に無理やりキスをする。 小さな熱い舌を搦めとって、口の中全部を舐めて刺激すると、雪がおずおずと反応を返してくれる。 舌を搦ませるとたどたどしく搦めようと動いて、きつく吸い上げると腰を畝(うね)らせて少しだけ震える。 そうやって時間をかけて口吻けを繰り返して、少しずつ、抵抗する気力を奪った。 「んふうぅ・・・たけるぅ・・・ずるい・・・んっ・・・」 雪がどれだけ抗議の声を上げても、止まれなかった。 ずっとずっっとずっっっと我慢していた劣情が、爆発して暴走して、止めることなんてできない。

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