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銀花姫 24

猛の言葉の意味がわからずに固まってしまったボクを置いて、猛はボクから離れてしまう。 猛は立ち上がって、髪を拭いていたタオルを持って、洗面所にある洗濯機にタオルを放り込んで戻ってきた。 ボクも起き上がってソファに座りなおして、猛を目で追っていた。 発散するって?誰と?どこで? ボク以外を抱くつもりでいるの? ソファに座って猛を見ているボクを、猛は絶対に見ないようにキッチンに入って、冷蔵後から缶ビールを取り出して、ビールを飲んでいる。 そんな飄々(ひょうひょう)とした態度に、怒りと悲しみが一気に込み上げてきて。 ボクは猛に向かって、叫んでいた。 「どういう意味?ねえ?!」 「え?なにが?」 びっくりしたように猛はボクを振り返る。 なにがなんだかわからないという表情の猛に頭きて、ボクはキッチンに立ったままビールを飲んでいる猛のところへと、ずかずか歩いて行った。 猛の目の前に仁王立ちして、びっくりしている猛にボクは捲(まく)し立てていた。 怒りと、嫉妬と、情けなさと。 惨(みじ)めさで。 「適当に発散するって?どこの誰と?」 「え?・・・いや・・・」 「ボク以外の人とセックスするの?!・・・・・・・・・なんでぇ?」 どうして・・・どうして? どうしても、猛がボクだけを見てくれない。 いくら体を繋げても、結婚の約束をしても、何度も好きと言っても、一日中同じ時間を過ごしても。 貴方はボクを『好き』になってくれないの? 叫んだ直後に、涙が溢れそうになって、ボクはぐっと口唇を噛み締めて、猛を睨みつけていた。 そんなボクの様子を見て、猛は最初びっくりしていた表情から、ボクが言いたいことを理解して、慌てて頭を振って否定してくれた。 「違う!違う!そんなことするわけない!!」 「・・・」 「発散するってのは、ジム行ったり、走ったり、そういうので体動かすって意味だ!」 「ほんとに・・・?」 「雪以外とセックスするって意味じゃねーよ!」 猛は缶ビールを、ガンッ!って音がするくらい乱暴にテーブルに置いて、泣きそうになっていたボクにキスができそうな距離に迫ってきて、ボクの目をみて言ってくれた。 「そりゃ、今までは適当に遊んでたけど、今はもうしてないし、これからもそのつもりはない」 「・・・」 「やっと雪と結婚できるのに、そんなことするわけないだろう!」 「うん・・・」 猛が真剣に本気で言ってくれているのは、わかる。 猛がボクに嘘を言わないことは、知っている。 貴方を、信じてる。 信じたい。 そんなボクの気持ちをわかってくれているのか猛はボクの肩を掴んで、少し強く力をこめる。 真っ直ぐにボクを見つめて、今までで一番真剣な強い瞳をして、はっきり言ってくれた。 「雪が欲しい。雪しか見ない。雪を幸せにする。雪を抱きしめたい。雪を笑顔にしたい」 「たける・・・?」 「オレは、ずうっと、そればかり考えてるよ。・・・・・・ダメか?」 「ううん!」 ボクは頭を思いっきり振って、真剣な瞳でボクを見てくれている猛に、思いっきり抱きついていた。 裸の胸に顔を埋めて、猛の早く打ってる心臓の音を聞きながら、たくましい背中に腕を回した。 「好き、大好き、猛だけが好き」 猛がボクの肩を掴んだまま、少し体を引く。 ボクの顎(あご)を掴んで上に向かせて、覆い被さるように顔を近づけてくる。 ボクは猛の欲情した真剣な瞳をみて、思わず微笑む。 そのまま瞳を閉じて。 口吻けをして。 Fin

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