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第41話 支配 相模side 

 デスクの引き出しから、素早くコンドームを1つ出し、袋を破いて自分の性器に装着し、相模は愛する(つがい)… 何年も執着して待ち続け、ようやく手に入れた美しい妻の足をつかみ、とろとろと淫密(いんみつ)で濡れた暖かい身体の奥へと潜り込む。 「ああ… んんっ… ふぅ…」  愛しい妻は夫を奥深くまで受け入れ、ギュッ… と中で締め付けると、背中をそらし快楽で震えた。 「マキ…!」  可愛く、ツンッ… と(とが)った乳首のまわりを、ヤワヤワと指先でもむと… 「ん… エイジさんっ… あ… んんっ…うっ…」  甘いヨガリ声を上げた妻は唇を尖らせ、腰をゆらゆらと動かし… もっと強く突いて! キスをたくさんして欲しい! と相模に言葉ではなく、身体を使ってねだった。  不意に相模の脳裏に悪夢のような記憶が(よみがえ)る。  瞳を閉じて、少しだけ動きを止め…  フゥ―――ッ… フゥ―――ッ… と、相模は深呼吸をした。  休憩スペースで嫌がるマキの唇を奪い、バカ従兄弟カズヤが(みだ)らに股間を押し付ける姿が… 今も相模の脳裏に焼き付き、マキと番になって結婚もしているのに、カッ… と怒りに火が付き、カズヤを本気で殺したくなるのだ。 <嫉妬と屈辱で頭がおかしくなりそうだ!! カズヤがまだ生きていられるのは、側にマキがいたからだ!!>  今も、少し前に見た華奢(きゃしゃ)なマキの胸倉をつかみ、脅しをかける獣のようなカズヤの姿が頭にこびりついて… アルファの原始的な本能が、“奴を殺して番を守れ!!” と(うった)えかけてくる。 「ああっ… エイジさん!! んんっ…! あっ…!」 「マキ…!! マキ…っ!!」 <怒りをマキにぶつけたいのではない… だが、アルファの本能を抑えるのは至難(しなん)(わざ)で、言うことを聞かない番を、ねじ伏せて支配し服従させたくなる>   「あっ…! ああっ…! ああっ…! ううあっ… エイジさん…エイジさん…エイジさん!!」  ガツッ… ガツッ… ガツッ… と肉と肉がぶつかる、荒々しい音を立て… 相模は夢中でマキの最奥を突き続ける。 「ああ…っ!! エイジさん…っ! 待ってぇっ!! ああああっ―――っ…!!!」  ゴツッ… ゴツッ… と鈍い音を立てて、硬いデスクに背中をぶつけながら、マキは達した。 「マキッ…!! マキッ…! クソッ… カズヤの奴!! よくも私のマキに!! 私のマキに!!!」  コンドームを外しゴミ箱の中へ捨てると… ぐったりと疲れ切り、裸のままでソファに寝かしたマキに、脱ぎ捨てた自分の上着を掛けた。 「・・・っ」 <ああ、クソッ!! やってしまった!!>  熱が冷め、理性の縛りが強くなると、アルファの狂気を抑えられなかった自分が情けなくて、相模はどっぷりと反省の沼へと沈み込んだ。 「すまない…」  ソファの前に(ひざまず)いて、相模は顔に被さったサラサラとした、マキの髪を耳へかけ、頬にキスを落とす。  不意に目蓋(まぶた)を開け、相模の顔を見てマキはふわりと笑った。 「僕もゴメンねエイジさん、さっきは意地悪して言わなかったんだ… 本当はね、退職願を届けたくて出社したんだ… 最後ぐらい、しっかり自分で終わりたかったからさぁ…」  バカ従弟カズヤを(ののし)りながら、嫉妬で瞳をギラつかせ自分を抱く相模の姿に、マキ自身も反省する部分がたくさんあると、気付いたのだ。 「マキ…」  マキへの愛しさで相模の目尻が下がる。 「すごく仕事は好きだけど… お腹に子供がいるかも? って思うと、これ以上は仕事に夢中になれないなぁって…」  仕事よりも子供に夢中になりそうだから、マキは両立は出来ないと笑って言う。 「…っ!」  胸がいっぱいになり、相模は言葉を失った。    マキは手を伸ばすと、夫の曲がったネクタイを正しい位置に整え直し、話を続ける。  「僕はエイジさんの奥様業と母親業に、専念するつもりだから安心して? それにエイジさんの妻なら、あなたの隣で社交活動にも参加しないといけないよね?」 「手伝ってくれるのか、マキ?」  意外なマキの言葉に、相模もさすがにこれには驚いた。 「やるよ! 僕には結構、そういう能力あると思うし… これも仕事の内だよね?」  ニカッ… とマキは小悪魔のように笑う。 「嬉しいよマキ!」  有能な妻が隣にいれば、相模はどこかの性悪オメガに、誘惑フェロモンをふりかけられずに済む。  ふりかけられたとしても、妻が隣にいれば、何も怖くは無い。 「それとね、あのバカ従兄弟… カズヤ? あいつに今度会ったら、問答無用で金蹴(きんけ)りしてやるよ、アソコはアルファでも(きた)えられないでしょ?」  ニヤリッ… とマキは悪い笑みを浮かべた。  相模は思わず吹き出す。

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