2 / 20
第1話
「清明 さん!」
傾きながらもしっかり着地した機体に安堵することなく、パイロットの名を叫んで走り出そうとした凛を先輩整備士の伊藤が止める。それでも凛はその手を振り払って駆け寄り操縦席を覗いた。機体に銃痕がある。どこか損傷しているのだろう。でなければ清明があんなに不安定な着陸をするはずがない。
凛は清明の首に巻かれている白いマフラーに赤い血痕が散っているのを見つけ息を飲む。
「大丈夫かすり傷だよ、凛」
蒼白になってしまった凛を安心させるように、ゴーグルを外しながら清明が微笑んだ。
「だ、大丈夫じゃないです!手当します!」
輪止めしている伊藤に叫ぶと、有無を言わせぬ勢いで凛は清明を兵舎の方へと引っ張って行った。
ともだちにシェアしよう!