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第2話-1

 大東亜戦争下、大日本帝国。  学徒出陣で徴兵された凛が配属された時、清明はもう『飛来神』と呼ばれていた。  学生の徴兵はまず文系の生徒からだった。故郷を離れ東京で文学を学んでいた凛もその対象となった。学歴社会でもあった軍に、学生たちはある程度の階級で入隊できる者もいた。だが凛の場合、実家が修理工場を営んでいるという経歴が目に止まったらしく、数が減っていた飛行機の整備士として配属されることになった。異例だったらしいが階級は低かった。  ただ、稼業がそうであっても、ネジを締めるのを手伝ったことがある程度だった凛は現場では全くと言っていい程役に立たなかった。上官に酷く怒鳴らた。歳の割に童顔で、頼りなさげな華奢な体躯も気に入らなかったのかもしれない。伊藤に何とかフォローしてもらいながら整備の端くれとして日々努めていた。  そこで清明に出会った。  任務に向かう前、機体に両手を着いて目を閉じる。戦闘機乗りの象徴、白いマフラーが風に翻る。何かを祈っているような、それとも無になろうとしているような。  その姿を見た時『凛』という言葉が凛の頭の中に浮かんだ。自分の名前はこの人にこそふさわしいと思った。  美しかった。  一瞬で心が奪われた。  不知火川清明(しらぬいかわせいめい)。神様の名前。

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