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第2話-2

 伊藤の話だと、清明は志願して海軍に入ったらしい。操縦技術は神業と言っていい程で、その上敵に突っ込んでいくことを全く恐れない。どんな任務も偵察も命を落とす危険があろうが邁進する。なのに昇進に興味がなく、その戦果を自慢することも一切なかった。それは清明が人とあまり関わりを持とうとしないせいでもあったが。  凛はある日の整備で計器を丹念に磨いた。はっきり言ってしまえばそのくらいしか出来ることがなかったのだ。だが次の日、飛行を終えた清明が整備場に入ってきた。基本的に清明は整備に口出しはしなかったので、整備の者誰もが驚いた。 「な、何かありましたか?」  凛の上官が清明に焦ったように訪ねる。 「計器を磨いた者がいなかったか?」 「へ?」  上官がおかしな声音で返事をする。当然だ、凛が勝手にやったことで上官には何も言っていない。  もしかして駄目なことをしたのだろうか?  凛の中に不安が芽生える。でも名乗り出ない訳にはいかない、上官が誰だといわんばかりに鬼の形相で全員を見回している。  凛はそっと手を挙げると震える声で「自分です」と言った。上官が貴様かという目で凛を睨みつけるのと、凛の前に清明が立つのが同時だった。そして。 「…え?」  思わず凛が声を漏らした。凛の目の前で清明が深々と頭を下げている。 「ありがとう。今日の任務は天候もあって計器が頼りだった。一緒に飛んだ仲間も同じように思っている」 「あ…あの…」  凛は口をパクパクさせたまま、ただ清明を見つめていた。  清明はもう一度、丁寧に一礼して出て行った。  バンと、凛の背中を叩いたのは伊藤だった。 「お前、不知火川さんに褒めてもらっておいて礼も言ってないぞ!」 「あ!」  凛が我に返ったように伊藤の顔を見た。上官が早く行けと声を荒げた。

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