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9 共同開発
「えっと詳細説明していきますね、こちらにどうぞお座りください」と案内されたので
座った。
「説明の前にお二人はαではないですよね?」
と聞かれたのですかさず山口くんが
「αのほうがいいのであれば営業担当を交代してもらいますが、その場合また日を改めて」と発した。
「あ、いえいえ違います、実はこの開発はΩやβさんの意見を聞きたいので逆によかったなと思いまして」
「珍しいですねαの方がそう言われるのは」
「よりよい製品を作っていきたいがためです」
え? 左の薬指にはすでに婚約指輪を嵌めていた。
ドックン……。
良かったのかもしれない。
このまま僕の存在に気づかなければ……って僕は中学生時代の時の友人と間違えてる。
そう間違ってていてほしい。
「では改めまして、今回はΩ専用のカラーの開発になります、デザイン制と機能制をあげていけたらと思い近藤グループの知恵をお借りしてというのが内容になります」
「これはアンケートでもして三厨グループで開発も可能なのではないのですか?」
「ええ、そうですねそうなのですが、実は近藤グループに憧れがありオファーしたところ近藤社長が良いとお返事を頂けたので……ってなんかすごいずうずうしいんですけど……アハハ」
全然言葉まとまってないけどでもうちに憧れるって相当三厨グループも闇深そうだなって思いながらカラーの話を進めた。
「では、本日はこれまでで……あの1つよろしいですか?」
「ええ」
「近藤さんはもしかして本間聡さんですか?」
……え?
「本間??」
ドックン、ドックン心臓がうるさい、奏じゃなければ良いと思っていたのに本間という名字を知っているのは中学までしかありえない。
僕は彼の顔をはっきり見るとあの優しい笑顔が目に入りぐらっと視界がぼやけた。
「ちょっ!!? 近藤さん!!?」
意識を手放した。
「って三厨さんもですか??」
1人残された山口は受付に行って事情を話し休める場所に移動した。
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おかしい。この子は近藤聡ではない、本間聡だ。
中学生で別れた。
俺のΩ。
本間家と三厨家は代々敵対関係にあった。
なのに聡だけは俺の家に遊びに来ていつも遅くまで遊んでいた。
それが突然パタリとやみ。
本間家から去ったと話を聞くと聡の存在は記憶だけになった。
でももし聡がΩだったら俺と結婚する。
この約束だけは永遠と守られていて今だって出会えれば番にして聡の心に寄り添ってあげたい。
だから聞いてみよう。
「本間聡さんですか?」
聞いた、俺は偉いぞ。
彼は驚いた表情になり目の前で倒れた。
αの血がざわざわとした。
なんだこれは興奮している。
ダメだ冷静になれ、本間聡はもういない。
近藤聡ということはすでに番がいる。
それとも名字が変わってしまっただけなのか?
嫌だ、離れたくない。
傍にいたい。
天井を見上げるとプロペラがまわっていた。
ここは会社の私の部屋だ。
あーそっか俺は倒れてしまったか。
「ふぅー」
!?
横を見るとこちらを向いてすやすやと眠る聡がいた。
えっと俺は……。
「探していた人でしょ?」
「智里 」
「ああ、そう」
「安心して近藤社長にはこちらから電話しておいた、気分が良くなり次第そちらに送り届けると言うことを」
「ありがとう」
久々に見た、あの頃とあまり変わらない聡の顔。
どこか不安で悲しい表情。
「懐かしい……って智里はどうしてここに?」
「受付から電話があったのよ、今すぐに副社長室にお願いしますってね」
「そうなんだ、ご足労いただきました」
「いいえ、もし見つかったらって話だったけどこの子すでに番成立してるわよね、どうするの?」
「ねーまさかこんなに早く番ができてるなんて思ってなかったからさ」
がくりと聡の様子を見ていると
「奏……」
と呟いていた。
「今の聞いた?」
「聞いた、認識はしてるみたいね、よかったじゃない」
「うん。でもさはぁー聡は俺のって思ってたから余計にぐったりするわ」
「そうね」
ドアが開き
「あの、近藤さん起きましたか?」
「ああ、まだのようだけど」
「うちの秘書が車まわしてくれたので連れて帰ります」
「そうか、なんだか不思議なことが起こってしまって申し訳なかったね」
「はい……もしかして運命の番に似たようなことなのでしょうか?」
「!? この子はすでに番われている様子だけど」
「え??」
驚いていた、もしかしたらカラーが少し大きいので番われていることを知らないのか。
「あ、そうだったんですね」
と山口は残して聡をおんぶして出て行った。
「もう少し一緒にいたかった、これがいけないことだとしても」
「そうね」
「聡と番わったのは一体誰なのか」
「もしかして取り返すの?」
「って俺は思っちゃうよ」
「相変わらずの好きね」
「うん、それがもし不幸になったとしても俺は聡が傍にいないとダメだ」
「まったく妬けちゃうわ」
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