1 / 15

第1話

「は?」 「は? じゃ無いよ。これは決定事項だ」 「ッ……、兄さ」 「ここでは社長と言いなさい」 「ッ……」  俺、橘将臣は目の前にいる自分の兄、橘恭司からたった今言われた事に異を唱えるが、兄はニコニコと笑顔を崩さず俺の言葉をはね退ける。 「前のは役立たずだったからね。今度は私がちゃんと選んだから問題は無いはずだ」 「だから、前から言ってるように俺には……」 「決定事項だと言っただろう?」  必要無い。と言いたかった言葉は、兄の台詞によって口の中で消えた。  兄は机の上にある電話で内線ボタンを押すと 「入ってもらって」  扉の外にある秘書室に内線でそう告げると、すぐに社長室の扉がノックされる。 「どうぞ」  机の奥で座ったまま兄は良く通る声でそう言うと、ゆっくりと扉が開き社長付きの秘書が扉を開けお辞儀をしながら入室する。その後から一人の男が一緒に入って来て……。  俺は後ろを振り返り入室してくる二人をジトッとした視線で眺めていると 「将臣、紹介しよう」  嬉しそうな声音で秘書の後から入って来た男を俺に紹介しようと、兄が椅子から立ち上がり 「今日からお前のボディーガード兼運転手の……」  それがDomの家村大雅との出会いだった。

ともだちにシェアしよう!