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「あのホームセンターができてからお客様も減ってしまったし。さすがに配達は必要かと思って免許を取るために。車が運転できれば仕入れもできるし、美澄さんに迷惑かけないですみます。色々やらないといけないことが山積みなんですよね。まぁ何もすることがないよりはいいけれど」 「アルバイトって……時々こうして手伝いに来てやってるじゃないか。それに週に一回は休みだろ?」 「来てもらうのだって不定期ですし。美澄さんにもお仕事があるでしょ? 週に一回のお休みの日は教習所もお休みです」 「まあ、そうだけど……。って、休み変えればいいんじゃないか?」 「そんな簡単に言わないでください。それに、休みの日って一番儲けがない日を当ててるんですから、ダメですよ」  教習所に通っている間だけ休みを変えればいい、なんて美澄が言いだし、藤崎は呆れてしまった。そんな都合よく変えられるのなら、きっとやっていただろう。  水切りで赤くなった手を水桶の中から出し、水分を拭いてハァッと息を吹きかけた。そして美澄に近寄りストーブに手をかざす。 「ホームページ更新もしなくちゃダメだし、アレンジメントの商品の数も少し増やしたいし、コンベンションにも、出たいんだ。って、欲張りすぎかな」  指先を何度も擦り合わせていると、血流が良くなりジンジンと痺れて感覚が戻ってくる。  ――俺さ、いつかプリンスホテルの正面玄関に自分の作品を置いてもらう。コンベンションに出たい。  恋人が言っていた言葉を思い出した。彼が描いたスケッチは今でもそれは大切にしまってあり、時々眺めては感傷に浸っていた。 「もしかして、パソコンの壁紙にもなってるあのイラストって、浩輔の?」 「ええ。スケッチブックだと色褪せてくるので、データとしてパソコンに取り込んであるんです。浩輔が一番お気に入りだったのを壁紙に」 「へぇ、あいつ見た目にそぐわず繊細な男だな。あんなキレイなイラストを描けるとか尊敬する」 「僕も同感です。でも、見た目にそぐわず、なんてことないですよ? とても器用な人でしたから」 「ああ、惚気はいいから……」 「惚気じゃないです。彼はその話をしてるとき、本当に幸せそうでした。だから、この店を続けるって決めて、浩輔のもう一つの夢も叶えたいって思ったんです」 「そうか、じゃ俺にできることがあれば何でも言ってくれよ? 遠慮する仲でもないしな」 「これ以上お世話になるの悪い気もしますけど、でも遠慮しないです」 「なんだそりゃ。ちっとはしろよ」 「どっちなんですか」

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