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 藤崎はパソコンの画面を見つめながら、少しぼんやりと昔の思い出に浸ってしまった。こんな風に感傷的に思い出すことはあまりなかったが、この間、奥村の夢を見た事と墓参りに行ったことで少しナイーブになっているのかもしれなかった。 「あのー、すみません」  店の外で声を掛けてくる人に、藤崎は驚いて立ち上がった。 「は、はい!」  慌てて声の方へ小走りで近づくと、見たことのある男性が立っていた。顔色はあまりよくなくて、どこか辛そうな様子だった。 「アルバイト募集、もう決まりましたか?」  聞いたことのある声にピンときた。この間、お見舞いに行くからと花を買いに来た男性だ。印象があまりにも違うのですぐには分からなかった。 「あの、この間……お見舞いのお花を買って下さった?」 「は、はい! 覚えていて下さったんですね! あ……それでその、バイトの方はもう決まってしまいましたか?」 「さっき張り出したばかりなので、まだ大丈夫ですよ」 「ああ、そうですか。よかった。あの、それじゃあ面接をお願いしてもいいでしょうか?」  どこか必死な感じを受けながらも、花を買ってくれた時の笑顔を思い出した。面影がだぶる彼を見て、無意識にどこか繋がりを感じながら、ザワリと胸の中が騒ぐのが分かった。そして面接と言われ、全く何も考えていなかったことに藤崎は焦ってしまう。 「この張り紙が目に入ったので飛び込んだって感じなんです。日を改めて来るとしたら、もう望みはないでしょうか?」 「いえ、希望される人とは面接をしようと思っています」  よく考えれば、募集の張り紙を見て声をかけてきたのだから、履歴書がないのも当たり前だ。妙に焦って先走ったことが恥ずかしくなった。 「あの、じゃあすぐに履歴書を書いて来ますので、いつ頃伺えばいいですか?」 「えっと、うちが閉店後に来られそうなら、今日にでも」  そんな短いやりとりの後、真宮智聡です、と名乗った彼は大急ぎで帰って行った。  初めて会ったあの日、とても落ち着いた印象があったため今日の彼にはとても驚いた。けれど妹のために花を、と考えるやさしい彼に悪い気はしない。むしろ興味が湧いてしまった。他にアルバイトの候補が来たとしても、彼を選んでしまうんじゃないかと、心の中にそんな直感を覚えていた。

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