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 翌日の夕方、藤崎は床に散らばった茎の切れ端を箒で掃き、店の奥に積み上がっている段ボールを解体し、クリスマス用アレンジブーケを作ろうと準備を始めた。  花桶には売れ残ってしまっている花たちが淋しげに数本取り残されていて、それらを合せて花束を作り、翌日のセール品として店頭に並べることにする。クリスマスをイメージした緑と赤の細いワイヤーリングで束ね、薄手のハリーペーパーでクルリと包んだ。この状態で花桶に差しておけば、買ってもらったときに最後のラッピングをすればすぐに手渡す事ができる。  いくつか作った後、首をコキコキと鳴らし立ち上がって伸びをした。すでに店先に出してあった商品やその他の花桶も店内へ引っ込めていて、閉店するためにシャッターを下ろしに外に出た。  日が暮れるのが早くなったなぁと空を見上げる。日が沈んだばかりの空はオレンジとブルーとが入り交じり、いつの間にかたくさん雲が出ていて、高積雲が幻想的に色付いていた。風は日に日に冬の冷たさを運んで来ている。高い空は無性に切なさを深くさせた。  中へ戻った藤崎は、今日の売り上げをノートに記入し、同じものをパソコンでも入力していく。すると少しだけ開けてあったシャッターの下から、ウロウロ歩く足が見えた。きっと昼間の彼だな、と思い、腰を上げた。 「真宮さん?」  勝手口から外に回り、店の前に立っている男性に声をかける。あの時と同じグレーのコートを着た男性が振り返ると、ホッとしたような顔があった。 「すみません。もうお店が終わっているのかと思って、声をかけていいのか分かりませんでした」 「うん。来ると思ってたから、シャッターを少しだけ開けて待ってたんだ」 「あっ、電話して確認するべきでしたよね。……すみません」 「いいっていいって、気にしないで。僕が気が付いたからそれでいいじゃない」  シャッターを閉めて施錠をした後、恐縮しまくる真宮と裏口へ向かう。緊張しているのか、やはりどこか顔色が悪い気がする。 「こっち、自宅も兼ねてるんだ。ここで靴脱いで上がってね」 「はい。……んがっ!」  ゴインと大きな音とともに真宮のひしゃげた声が聞こえた。驚いて振り返ると、ドア枠の上部へ見事に額をぶつけている。 「うわっ! 大丈夫!? 僕は小さいからぶつけないんだけど、真宮くん、大きいから……」 「だ、大丈夫です……」  頭を下げて入って来た真宮は、涙目になりながらおでこを撫でている。どうやら頭ではなくおでこだったようだ。ことごとく藤崎の周りには背の高い人間が集まってくる。 (当てつけか? まったく……) 「あの……?」  背の高い真宮を眺めてボヤンとしていると首を傾げて聞かれ、藤崎は慌てて何でもないと手を振った。事務所兼自宅へとあがってもらい、簡易のテーブルを出して座布団を差し出した。

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