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06
「ごめんね、汚くて狭いところで。びっくりしたでしょ」
「い、いえ! そんなことはないですっ」
大きな体で小さな座布団の上にちょこんと正座し、ピンと背筋を伸ばしかしこまっている。それを横目に脇のキッチンでお茶を準備した。
「寒かったでしょ。お茶しかないんだけど、暖まってね」
「ありがとうございます」
湯飲みを手にしてひと口含み、ホッと息を付いたようだった。藤崎も向かい合うように座り真宮が落ち着くのを待った。
「じゃあ、今度こそ履歴書を見せてもらっていいかな?」
「は、はいっ」
真宮は肩から斜めに掛けたバックを開け、きっちりと白い封筒に入った履歴書を差し出してきた。お互いに緊張してしまい、どうもどうもと頭を下げ合う。
履歴書には驚くほどの高学歴と、前職も大手の社名が記載されてあった。年齢は二十六歳、T大卒業後、大手旅行会社のツアープランニングの仕事に付いていたらしい。
年齢からしてこれからが働き盛りなのに、どうしてアルバイトに応募してきたのか不思議だ。添付された職務経歴書も、内容を見る限りでは同じ職種で別の会社にすぐに入れそうに思えた。
(この経歴でなんでアルバイト?)
藤崎は履歴書を見ながら時々視線を上げて真宮の様子を伺った。特に何か気になる所は見当たらないが、それは自分が人を見る目がないからなのか、本当に裏のない人間なのか判断ができない。
「あの、すごく大手にお勤めだったみたいだけど、辞めた理由、聞いても平気かな?」
「あ……やっぱり気になりますよね」
聞かれると思っていたんです、と真宮は苦い顔をした。とたんに人選を誤ったかとも思ったが、最後まで話を聞いても損はないか、と耳を傾けることにした。
重い口を開いて彼が話したのは、見た目の真面目さが裏目に出たようなでき事だった。
仕事は順調で毎日忙しくしていたという。旅行会社に就職したのは海外のいろいろな場所で、様々な芸術的なものに触れられるから、という理由からだったらしい。そのおかげで外国の芸術品、絵画や骨董、歴史や言葉に関しては詳しくなった。
そんなとき、大学の友人に「個人輸入の会社を一緒に立ち上げないか」と持ちかけられ、真宮は自分の趣味がそのまま仕事に生かせるなら、とふたつ返事をしたという。
「貯金はそれなりにあったし、作られた書類なんかもちゃんとしていたんで、油断しました」
「それで、会社はだめになったの?」
「……友人にお金を持ち逃げされたんです。簡単に信用した俺が悪い。そうだと分かったのが、昨日の事で……」
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