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「あーっと、これはちょっと……」  真宮の頬が引き攣っている。ホームページなど作った事のなかった藤崎が、休みの日や仕事が終わってから勉強しつつ作成していた。花のアレンジはできるのに、こういう文字の配置や色の選択などはどうしても上手くできない。 「だめ、だよね……? 背景は違う花にした方がいい?」 「そういう問題でも、なさそうです」  真宮の言葉に藤崎の笑顔も引き攣った。相当酷いということだろう。少し教えてもらえればできるようになるのなら、アドバイスをもらえないだろうか、と思った藤崎は、そのことを真宮に提案した。 「いえ、このくらいなら俺が作れますけど、どうしますか? 藤崎さんが最後までやりたいというなら、教えますけど」 「あー、たぶんこの辺が僕の限界な気がして……」 「じゃあ、藤崎さんのイメージに合った、清楚な感じに作りましょうか」 「せ、清楚って……」 「あ、すみません。でも、始めて藤崎さんを見た時、静かに咲く一輪の花、みたいな印象で、綺麗だなって思ったので……」  抵抗なく真宮の口からそんな言葉が出てくるので、思わず顔が赤くなった。今まで清楚だなんて言われた事も、花に例えられた事もない。 (びっくりした……)  もう三十路になろうとしている男に、なんて似合わない言葉なんだと思う。それに男相手に使う言葉じゃない気がして、余計に照れくさくなった。なのに、彼の口から出る言葉は素直に染みこんでくる気がして、胸の奥の方をくすぐった。 「ああっと……、うん、べつに、いいんだけど。でも僕、もう三十近いし、そんな、言われた事もなかったからさ、ちょっと驚いた」 「えっ、藤崎さんって俺より年上なんですか!?」  驚いたように顔を上げた真宮と目が合った。パソコンの画面を見ていたせいで、あまりに近い距離に思わず体が仰け反った。 「う、うん。真宮くんとは三つ違いかな。いったい何歳だと思ってたの?」 「同じくらいか年下、なのかと思ってました。だから一人でお店をやるのって大変だろうなと」 「年下って……ああ、まぁそう見えるよね。そ、それで、この辺のフォルダに画像とか入ってるので、好きに使ってレイアウトしてもらっていいから」  急に大人びた顔を見せた真宮にドキリと胸を弾ませた。動揺しつつ説明していると、近くの真宮からフワッといい香りがする。慌ててマウスをクリックして説明し始めた。

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