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「分かりました。細かい所はまた聞くかもしれないです。特にこうしたいっていう希望があったらまた指摘してくださいね? 一応、俺のイメージでサンプルを作りますので。あ、じゃあここに……」  反射的に真宮の手がマウスを握る藤崎の上に重ねられる。驚いて手を引こうとしたが、タイミングがズレてしまった。偶然とはいえ、手を握られて固まった。 「あ……」 「す、すみません……」  お互いに驚いて手を離す。肌が少し触れあっただけだったのに、鼓動が高鳴り動揺した。美澄に触れられた時とは違う種類のそれに、頬が熱くなる。 「あ、ありがとう。本当に助かるよ。僕はこういうセンスないし、ここまで作るのに二ヶ月かかってるんだ」  動揺を隠しながらそう言って情けなく笑うと、時間がないから仕方がないですよ、と笑顔を返された。 「だって、花のアレンジができるんですから、藤崎さんはすごいと思います。センスがないとあんな芸術的には作れないですよ」  フッとやさしい口調になった真宮が、画面の黒い部分に反射する藤崎をじっと見つめている。思わずぎこちなく視線を逸らした。ここのところよく目が合う。藤崎がそれだけ彼を見ているからかもしれない。だがいま目が合ったのは偶然じゃないような気がして、小さな期待がひょっこり顔を出しそうになり、それをぐいぐい押さえつけた。 「お世辞はいいってば。あ、ちなみにこれの再編成は別料金でちゃんとお支払いするので、心配しないで」 「え、いいですよ? これくらいならそんなに時間かからないです」 「そうなの? 僕はやろうと思って気合いを入れてもできるかどうか、だな」 「じゃあ、モノを見てから藤崎さんが決めてください。あ、それか……売れ残った子を捨てる前に、少し分けてもらうっていうのではダメですか?」 「え? 売れ残りは咲ききっているからそんなに長くは持たないよ? そんなのでいいの?」 「いいんです。藤崎さんが選んで買って来た子が欲しいんです。俺も、アレンジの勉強とかしたいので」  花は生きもので、いつまでも店には置けない。期限付きの商品だけにコストがかかる。捨てるのは嫌だと思ってもそれは仕方ないことだ。それを欲しい、と言う彼の真剣な言葉にうれしくなった。 「……ううん。持って帰っていいよ」

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