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体がやたら重いが、手を伸ばせば彼の頬に触る事ができた。今度は大丈夫だ、とうれしくなり涙が溢れてくる。滲んで見えなくなってしまうのに、止めることができなかった。
藤崎がたまらずに「抱いて……」と掠れた声で囁けば、どうしてかその人影が一瞬驚いたように揺れる。
もっと欲しい、もっとして欲しい。夢の中の藤崎は現実よりも強引で貪欲で、欲望のままに言葉を発した。
少し戸惑う彼の指先がゆっくりと頬に触れ、再びキスを落としてくる。熱い舌に絡めるように、自らも舌を差し出した。もっと吸って全部持って行ってくれればいい、そんな気持ちで貪るようにすれば、頬を撫でていた手がゆっくりと体のラインをなぞって下へと降りていく。
(抱かれ……る)
こんなにリアルな夢は初めてだった。腰を撫でる彼の手の感触がうれしくて、素直に体が反応する。もう奥村には触れてもらえることなどないと思っていた。
「あっ……んっ、し、て……、あ、あぁ……」
脇腹を撫でられいやらしく腰が跳ねた。その間もずっと口は塞がれたままで、時々できる隙間から快楽に滲む藤崎の声が洩れる。もどかしい手が腰骨から徐々に中心へと伸び、一番触って欲しい所へと刺激を与えて来た。すぐにでも弾けてしまいそうで、ブルブルと体を震わせながらもっと強くして欲しいと願っている。すでに勃起した藤崎のペニスを大きく熱い手が握り込むと、自然と腰が揺れるのが分かった。
「あ、あぁ……は、やく……」
キスを解き欲求のままを口にした。握り込んだ手が動いて指の縁が亀頭をこすり、その腹で鈴口を撫でられる。奥村のさわり方とは違うそれにどこか違和感を覚え、きっとこれが藤崎の夢の中で、記憶があやふやになっているからだと思った。それでも性欲を刺激するような行為は久しぶりで、高まって達するには十分すぎた。
「ひ……んぁっ」
体の熱が解放されていく快楽に、藤崎はうっとりと陶酔した。腰が小刻みに震え、細い管を昇ってきた劣情の感覚に神経がピリピリと痺れる。もう一度キスして欲しいと思いながら、その欲求を言葉にできず、藤崎の意識は白くあまく融けていった。
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