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肩に冷気を感じ背筋を震わせた藤崎は、覚醒しない意識の中で本能的に毛布を引き上げた。居心地のいい場所を求めるように、夢の中で触れた熱を探し布団の中で手を泳がせる。
「ん……あったかい……」
見つけたそれにすり寄っていき、体の前面で抱き枕のようにして体重をかけた。なんて気持ちがいいのか、そんな事をうっすらと目覚めつつある頭で考え、ゆっくりと瞼を上げた。
いつも見える店へ続くガラスの引き戸、その隣には座卓があるはずだ。けれど部屋のどの景色よりも見慣れないものがアップで見えた。
(え……な、に?)
少し疲れたような、そんな表情が滲んでいる真宮のキレイな寝顔があった。
「な、な、なんで……っ」
驚いて勢いよく体を起こせば、ズキンとこめかみに痛みが走って顔を歪めた。
「い……ったい、なんだ、これ」
「あ、おはようございます」
真宮が布団の上で座り込んでいる藤崎を見上げ、寝起きの掠れた声で挨拶をしてくる。それはどこか生々しくさえあった。
「あの、なんで、真宮くんが……ここに、いるの?」
何が何だか分からないで混乱していると、体を起こし、そっぽを向いた真宮の頬が赤くなり、近くにたたんで置いてあったシャツを手にして広げた。何事かと見ていると、自分が全裸だということにようやく気が付く。
「わぁっ! なんで! ええ!?」
焦った藤崎は思わず手元の毛布を引っ張り頭から被った。尋常ではないくらいに心臓はバクバク鳴り、一気に血圧が上がって沸騰する。自分の全裸に驚きすぎて、真宮の格好がどうだったのか確認もできなかった。もしかして、と怖々顔を出せば、真っ赤になった彼の横顔が見えて、きっちりと洋服を着ているようで胸を撫で下ろす。
「あ、あの……男同士でこんなに恥ずかしがるのもアレですけど、とにかく後ろ向いてるので、服、着てください」
「ご、ごめん。そうだねっ、うん……」
ごそごそと頭から毛布を被ったままでシャツの袖に腕を通した。そしてそのまま毛布を引きずり押し入れを開け、下着を引っ張り出した。自分の醜態と状況が飲み込めずに今も混乱中だ。こうなった状況を聞くのが非常に恐ろしい。それは頭の中でぼんやりと覚えている夢のせいもある。
「あ、もういいよ。服、着たから」
藤崎は着替え終えた格好で畳の上に正座をすると、今までにないくらい緊張しながら真宮が振り返るのを待った。奥村と体を重ねたのが遠い昔でも、一度でも男を受け入れた経験のある体は、あの独特な事後の感覚を覚えている。けれどその違和感はないようだ。
目の前の彼も布団の上で同じように正座をして下を向いている。しばらくの沈黙の後に口を開いたのは真宮の方だった。
「あの、昨日……藤崎さん、お風呂でのぼせて倒れました」
「……!」
「あんまり遅いから心配になって見に行ったときには、もう茹でダコみたいにへばってたんで、そのまま引っ張り出して、とりあえず寝かせて……」
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