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1-65 それから

右があまり大事にはしたくないと言っていて 事務所なども間に入れての話し合いの結果、どうか穏便に、とのことだったし こっちも鬼番長が乱入した件もあり おあいこということにしておいた。 とはいえ個人的には戸賀の事をどうにも許せなかったのだが、 彼との経緯を話すと右は苦笑しながら、 じゃあ左の作った歌を歌ってもらえばいい。と 言って どういう風に償わせてやろうかと考えていた僕には、 やっぱり右が必要なんだなと思った。 それから晴空るりこのアルバムを完成させ、 例のアイドルプロデューサーに連絡を入れた。 やらかしましょうというとプロデューサーは泣いて喜んでいた。 かくして、 恋愛禁止のアイドルグループに「ロックンローラーに捧げる恋。」という歌を歌わせ ロック気取りのバンドに「アイドルを抱くために」という歌を弾かせてやった。 全く違うアーティストが対になるような歌を歌っていると一時期ワイドショーやネットを騒がせ プロデューサーはクビ覚悟だったらしいが結局アイドルグループの人気に再び火がつき、 CDもツアコンもなかなか飛ばし始めたようだ。 更に例のアイは独立宣言よりも前に、戸賀のファンである事をブログであかし 戸賀は認知していないようだったが、 熱愛疑惑まで出る始末で左はザマアミロという気分であった。 左自身は戸賀とはあれから話していないが、歌っている姿を見る限りは元気そうだ。 前から感情の起伏が激しい奴であったし、あいつはあいつなりに悩んで迷走してと奮闘しているのだろう。 それが"天才"というものではないのだろうか。 そういうスタンスをロックだと言う人もいるが、定理はないのだから真意は定かではない。 でも僕はもうきっと "れっきとしたロックンローラー" じゃないから、27歳では死なないだろう。 僕は酒も控えるし、早起きをするために早く寝る。 好きな人に会うために。 時々上手くいかないことくらい誰にでもあるし、ヤケになったりもするけどさ。 1年後もその先も、僕は多分、彼を追いかける。 「あー…ごほん、では一曲」 僕は今日も彼の横で、歌を弾く。 「よくわかんねえけど、お前らしいな」 そして彼は、笑う。 ....Next?

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