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接触 —判明—
一瞬……本当に一瞬だけだ。自分の貞操と、ミーハー心を天秤にかけた、そして猛烈な自己嫌悪に陥った。
いや! 誘拐強姦魔とかねーわ!!!!
「洸也」
いろんな感情でモンモンとしていると、グレイにアゴを掴まれていた。
「――っ!」
一瞬でも頭に過った思考のせいで、反応が遅れた。遅れた一拍のせいで、俺の口はグレイの唇で塞がれていた。
「んんんっ〜!!」
舌を入れられて、ねっとりと口内をなぶってくる。昨日も思ったけど、顔面が良いせいなのか、いい匂いがするせいなのか、コイツとキスするのは嫌じゃないと思ってしま……もう! イヤだ俺の脳みそ、ちゃんと働けよ!
だってこんな求められるようなキス、今までした事ないし!
唇が離れて、唾液の糸が伸びた。気づけば押し返そうと思って添えていた手は、グレイの袖を握りしめていた。
「もしかして、クスリがまだ残ってる?」
「――ッ!!」
思わず堪能してしまったのが恥ずかしくて、口元を手で隠した。
グレイが苦笑しながら、前髪をかき上げて後ろへと流す。
本当に顔がいいなこいつ、イケメンだとオールバックも似合うのか、ズルいだろそんなの。
そんなやっかみなんだかなんなんだか、よくわからない感情で目の前の相手を見ていると、また再び襲われる既視感。
なんだろう、なんか喉元まで出かかってるような……思い出せそうな記憶があるはずだ。
「俺、前にお前と会ったことある?」
驚くような顔をしたイケメンが、俺の両腕を掴んで詰め寄ってくる。
「……」
「……うぅ」
無言のままその眼力で俺を見つめるなよ! 圧が強いから! その反応は思い出してほしいって事か? いや、でも俺の知り合いにこんな顔面のいい外人なんて……。
茶色い髪に、オールバックの髪型……紙媒体の写真……? 文字があった気がするけど、俺は雑誌は読まないし、読むとすれば社報くらい……。
「あぁーっ!? お前、ジュニアだろ!! グレイル・ハリソン!!!」
「……!?」
グレイは俺の言葉に眉をしかめた。
「えっ……違う? 最近ウチと取引始めた超大企業の……」
社長息子……日本支社を任される予定だとして、社報に取り上げられていた。若干二十歳にして、すでにアメリカの大学を卒業済み、四カ国語を操る超エリート。
続けようと思ったのに、グレイは顔を歪めて不愉快極まりない顔をした。これは……怒ってる! そりゃそうだよ! だって犯罪を犯して身バレしてんだもん!!
グレイに左手でバスローブの胸ぐらを掴まれて、後頭部が浮かび上がる。右手が後ろに高く振り上げられて……! また来る! あの死ぬほど痛い平手がッ……!!
思わず腕で自分の頭をガードした、身をすくめて自分に危害が加えられる心構えする。
「やめろグレイ! お前、嫌われたいのか!」
『……ッうるさいっ!』
打たれると思ったグレイの手は、ジェイスが手首を掴んで止めてくれた。しかし、グレイはブチ切れて叫んでいる!
ドスッ
っと鈍い音を立てて、ジェイスの腹にグレイの左拳がめり込んだ! え!? マジ何やってんの!
俺はベッドの上に落とされてたが、人間のガチ殴りを間近で目撃して、衝撃で声も出なかった。
「〜〜っ!」
痛そうに腹を押さえるジェイスは、それでもグレイの手首を掴んでいた。
もしかして俺を庇ってくれたのか!?
『落ち着けよ、お前のこと否定なんてしてないだろ』
『ジェイス……覚えてろ、後で後悔させるからな』
俺には何を言っているのか全然分からないけど、口論が終わったかと思ったら、ジェイスがヒュゥと口笛を吹いてニヤニヤしている。
手首を掴まれていたグレイが、その手を振り払うように跳ね除けた。
そのまま両手を俺のバスローブにかけてきて……ヤバイ! 今度こそ殴られる!!
『ジェイス、手伝え』
俺が身構えようとしたら、グレイの両手は俺のバスローブの合わせを乱暴に開いた。
ガバッと……こう、本当、無理矢理系のAVで女優がやられてるみたいに!
あ、ヤバイ……これ、ヤられる!
「イヤだ!」
わたわたとその場から逃げ出すように、二人に背を向けてグレイの下から這い出そうとした。
そうしようとして、昨日平手打ちを食らったの思い出して、思わず体が動かなくなる。
「――っ!」
グレイはヌルッと蛇のように絡みついてきて、俺のバスローブの腰紐を解いた。
「べつに思い出さなくてもいいよ、植え付けてやるから」
「い……イヤだ、もうしたくない」
嘘泣きなんかじゃなく、声が震えた。男に突っ込まれてヨがる自分なんて知りたくない! 自分の尊厳を、矜持を、これ以上壊されるのがあまりにも怖かった。
「お願い、入れないでッ!」
ぐいっと上体を起こされて、完全に前が開いたバスローブは、俺の体を何一つ隠さなかった。
胸から首までを撫で上げられて、無理矢理上を向かされれば、グレイの肩に頭を預けるようになった。顔はすごく近い……興奮している荒い息遣いが耳元で聞こえて、ギュッと目を瞑った。
「怖がってる洸也、すごくそそるね……泣かせたいよ」
このサディスト! サイコパス! 絶対に泣いたりしないからな! そんな風に思ったけど、既に俺の目尻は軽く濡れている……そして、これから泣かされる事だってわかってる。
その顔に似合わない凶悪なブツが、俺の股を擦っていく。尻穴から玉裏の付け根まで……ぬちぬちと刺激されて、甘い刺激が下半身から迫り上がってくる。
後ろから腕で首を絞められるように拘束されて、空いた手で乳首をクリクリと弄ばれた。
「んっ……ふっ……!」
下唇を噛んで昨日知った疼きを抑えても、男としての矜持が傷付けられていく気がした。
さっき塗られた薬がローションみたいに滑って、今にも中に入りそうで……穴を通過していく度に、過剰にビクビクと体が跳ねた。
「このまま入りそうだね」
「やっ……やだっ!」
ぐっと穴に押し当てられて、お尻が窄まる。イヤだ! 入る……入っちゃう!!
「待て待て、さすがに拡げないと可哀想だ」
慌てたようにしてジェイスがベッドの上に乗ってくると、俺の足を持ち上げてきた。
二人は手馴れたように息ぴったりに……俺はグレイの腹の上に乗せられて、その手で足を抱えて広げられた。
ジェイスの眼前に下半身を晒されて、あまりの羞恥心に脳みそが爆発しそうだ!
「イヤだ! いやっ、離せ!!」
俺の足を抱えるグレイの腕に、ガリガリと爪を立てた途端、うなじに強烈な痛みが走った。
「いッ――!」
噛まれてる……! 首噛まれてる!! 反撃したら倍以上になって返ってくる! お前は半○直○か! ハンムラビ法典を見習えよバカ野郎!
噛まれた首に気を取られていると、ぬちっと太い指が入ってきた。
「あ゛っ……!」
足を閉じようとしても、グレイに両足を抱えられて閉じることができない。
ジェイスは舌なめずりしながらさも楽しそうに、俺の尻穴を指で横に広げたり、くるくると回してくる!
「ふぁぁっ……!? やめっ、やだ、やだ! やだあああっ!」
爪を立てていたはずの腕にしがみついて、体が大きくのけぞると、グレイが首筋を舐めてくる。
内側で指がイイところをかする度に、体がビクビクと跳ねて、俺の体はカクカクと腰を振る。
「はぁ……もう、我慢できない」
興奮しきったグレイの吐息にゾクゾクした。若さのままに乱暴に突っ込まれそうで、怖くて、泣きたくなって、心臓が痛かった。
『舐めろ』
グレイがジェイスに何か指示をして、俺の尻の下からその凶悪なブツを突き出した。
ジェイスがそれに気づいて視線を移すと……パクリ……と……。
ええええええええっっ!!! ちょっと待て!! お前、咥えるのかよ!
尻をいじられながら、驚きのあまり口がパクパクした。じゅぽっじゅぽっと音を鳴らしながら頭を上下に振って、恍惚とした表情でグレイの性器を舐め上げるジェイスと……目が、合った。
ニヤッと笑われた! そしていつの間にか増やされていた二本の太い指が、ぐちゅっと奥まで差し入れられて、小刻みに震えて……!
「あ゛ぁぁぁぁっ!!?」
「恥ずかしいだろ、ジロジロ見るなよ」
うそつけええええ! 今見せつけてただろ絶対いいい!! そんな悪態を内心叫びながら、尻穴の刺激だけで絶頂を迎えそうな体に戦慄した。
「やっ、イヤッ……やっ……ッ! イッ……!」
イきそうなんて言いたくなかった、歯を食いしばってなんとかその言葉を飲み込んだ。刺激を逃そうと腰の位置をずらしても、ジェイスの指は俺を追い詰めるようにイイところを狙ってくる。
イきたくない! イきたくない……ッ! イくっ!
思わず快楽に身を委ねようとした瞬間、ジェイスの指が引き抜かれた。
「あぁっ!?」
なんで、もうイけそうだったのに……!
はぁ、はぁと荒い息を吐き出しながら、イかせてくれなかったジェイスを恨めしく思って……そして、そんな自分に心から絶望した。
「準備できたぜ」
そうジェイスが声に出して、自分の広げられた股ぐらを視認した。
さっきまでジェイスが美味しそうに舐めていたソレが、俺の尻穴にジェイスの手によってあてがわれる……。
「――っ!」
何故だか泣きたくなった、ひどく裏切られたような気分だ。薬を塗ってくれたり、庇ってくれたりして……こいつは俺の味方になってくれるんじゃないかって、勝手に錯覚してた。
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