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お参りとおみくじ

 −−−鈴木遼一side−−−  瑞希はちょっと、変なというか、変わったやつだなって思ってた。  高校の時から。再会したいまでもその印象は変わらない。  親の残した借金返すのに嫌な顔しないし、恨んでる顔もしない。高校の時は学級委員なんていう面倒で貧乏くじひいたような役割を、推薦されたからって言って快くやってるように見えた。  次の年は文化祭実行委員なんてのもやってたな。しかも三年だったからって、文化祭実行委員長。  俺からしたら面倒でしかない。なのに、嫌な顔どころか盛り上げようって率先して動いてた。    それが眩しかったんだ。  俺とは遠い世界の人間なんだ、早く忘れようって何度も思った。そう思えば思うほど、瑞希の存在は俺の中で大きくなって、授業の合間、クラスから出るたびに瑞希の姿を探す自分がいた。  おまけに今回は、早くお金返せるように神社にお参りしたいって、それって早くソープでお客さん取るようになりたいって事なの分かってんのかな。まぁ、金を返してもらうのは俺の仕事なんだけどね。変なやつ。 「うん、寄って行こうか」  二礼 二拍手 一礼。ぱんぱん!  こんな大きい音鳴らすんだってくらいの瑞希の拍手音に笑いそうになった。 「早くお金返せますように!遼一にたくさん触ってもらって慣れるようがんばります!」 「瑞希、そんなに声張り上げなくても…」 「?人いないし大きな声出した方が神様に届くでしょ?」 やっぱり変だ。 「あっ!おみくじ!ひいていい?」 「いいよ」  相続したものが借金なんだから凶ひくんじゃないのかな。ついでに俺もひいてみよ。 「遼一見てみて~。大吉だったよ!遼一は?」 「俺小吉。ここの神社のおみくじ当てになんねーな。外れてんじゃん?」  小吉のおみくじをどうしようかと決めかねてると瑞希に横から奪われた。 「これとこれを重ねて……俺の大吉と遼一の小吉、重ねて二人とも中吉って事にしておこ?俺がこの一年お財布に入れとくから」  奪われたおみくじは無事に大吉と重なって、瑞希の使い古した財布に吸い込まれていった。  ふぅん、俺と瑞希の中間で中吉ね…。  悪くないんじゃん?運命共同体みたいでさ。  瑞希を財布を見つめたまま、自分がニヤケてる事に気づいてしまった。  違う違う、こいつは借金返してもらうから一緒にいるだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。店出られるようになったら他の奴と同じ。同居も解消する予定だ。

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