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初夜
金曜の朝。いつも通りに朝食を食べ、お互い朝のルーティンをこなし、先に出る瑞希を玄関で見送ろうとした時の事だった。
「遼一……あの、待たせたけど、今日の夜いいから……しょ、初夜って言うのかな?」
ちなみに最近朝は瑞希の試作品のパンを食べる日もあったりで、今朝は和食だったから瑞希早起きしなくて済んだな〜と安心してた日だった。
「しょ……瑞希、俺はいつまでも待てるから無理しなくていいんだぞ?いいんだからな?」
「遼一心配し過ぎ。俺だってちゃんと遼一が好きでちゃんと考えて練習して…あっ、とにかく夜ね! 行ってきます!」
夜ねの後で瑞希からキスされて誤魔化された感はあるけど練習って言ったよな?練習?練習!何したんだよ瑞希〜〜!!
◆ ◆ ◆
今朝の瑞希の問題発言のせいで今日は何度もぼんやりしてしまった。
瑞希をサポートするべくバリスタ目指してる俺は、今までの仕事と全く違う『お洒落なカフェ』で働いているのだ。
最初は緊張だらけで色々と…商品名を間違えるなど凡ミス連発だったが、今ではほんの少しだけ周りを見る余裕も出てきて、顔見知りの客も出来た。
今日はいつも一人で来る顔見知りの高校生男子が弟を連れてきて、スタッフ間で話題になっていた。見た目双子ほどにそっくりな兄弟で、見るからにハーフで人目を引くのだ。店内に二人が入ってきた時は少しざわついてた、くらいは覚えてる。
ともあれ今日は待ちに待った…というと俺が瑞希に飢えてたように聞こえるが、まぁ飢えてないわけではなかったが、瑞希のペースでゆっくり待ってようと穏やかな気持ちでいられた最近だったのに、今朝のあのお誘い。そりゃもう浮かれても仕方ない。浮かれきってて多分脳内の日本語も大変におかしい。
夕飯は簡単にパスタとサラダで、お互いに少し会話がおかしくて緊張してるのがバレバレだった。
片付けもそこそこに瑞希が「じゃ、じゃぁお風呂入ってくるから!」と広くもない部屋から脱衣所に走っていったのも、自分を勇気づけようとしてるかのようで、瑞希…本当に大丈夫なのか…?と心配になった。
ここはリビングで待つべきか、ベッドで待つべきか…。寝室に行くと瑞希が入ってこられるかが心配だ。このままリビングで待とう。
待ってる一分は長い。カップ麺の3分だってこんなに長く感じない。瑞希どんな格好で出てくるんだろう。普通にパジャマ?それとも何も着てなかったら…。
「遼一…あの……」
自分の妄想の世界に入り込んで手順をシュミレーションしてたら瑞希が上がって俺の目の前に立ってた。なんてことだ。
「遼一も風呂入るの?それとも……わっ!」
これ以上瑞希に勇気を出させ続けるのは自分が不甲斐なくなるなと、瑞希の腕を引いて抱き寄せた。下半身にだけ巻いてたバスタオルは勢いでハラリと落ちてしまった。はぁぁ、石鹸の匂いと、しっとりした瑞希の肌が心地良い。何もしなくても抱きしめてるだけで幸せな気分だ。
「遼一…お待たせ…。あの、もう入るようになってると思うから……」
……入るようになってる?もしかしてと後ろの蕾にゆっくり中指を入れてみると、そこは俺の指を難なく受け入れた。
「瑞希…もしかして…」
「ん……ちゃんと勉強して解すの覚えたんだよ。今まで待たせた分、すんなり出来た方が遼一喜んでくれるかなと思って」
「瑞希………」
その気持ちが嬉しくて、指をゆっくり出し入れしながら瑞希の唇を貪った。優しく触れたかったのに、瑞希が俺の為に…と思ったら、昂る熱を抑えられず、上下の唇を割って瑞希を内側から味わいたかった。
「ん……ふ………」
鼻から漏れるような吐息も可愛く、密着してる下半身も芯を持ってきているから感じてくれてる事にホッとする。指一本難なく受け入れてくれてるそこも熱く、中は絡みついてくれていて、瑞希、何本まで大丈夫なよう解したんだろうと、自分で風呂場で解してる瑞希を想像して更に興奮する。
試しにもう一本増やして中を拡げるように、コリコリする場所を刺激するように動かすと、瑞希の体がビクビクと反応した。
「わっ!」
初めてがソファーってのもなんか違うなと、そのまま瑞希を抱えて寝室に連れて行く。
「待っ…てりょーいち、指が……んっ…」
「ん?どした?」
「遼一のいじわる……まだ入ってるのに移動したら、あちこち当たって、んんっ、へんだよ…」
ベッドにゆっくり降ろして、更に後孔が開くように指を動かすと、生理的な涙が出たようだから瑞希の目の端を舐める。
「痛い?」
「ううん、変な感じってだけ。ねっ、もういいよ?」
ゆっくり、ゆっくり押し開くように瑞希に挿っていくと首にギュッとしがみつかれた。可愛いけどあんまり緊張してると余計に苦しそうだ。どうにかゆっくり腰を進ませながら、瑞希の瞼、唇、首筋とあちこち下を這わせていくと、力が抜けてていった。
もうこっちも限界越えてきてたので、抽挿を始めると唇を噛み締めているようだ。
「瑞希、苦しいの?ほんとに無理だったらいいんだよ?俺は瑞希とこうして暮らして触れ合えるだけでも満足なんだ」
「ちがっ、違うんだ、自分で拡げてるうちに、前よりも後ろの方が気持ちよくなっ、ちゃって、」
「ん?」
「あんまり、変な声出したら、りょ、いちに嫌われ、んっ、あ゛ぁっ」
我慢してるわけじゃないと分かったらこっちも我慢してる理由は無くなった。と、瑞希がそんなエッチな体に…と思ったらリミッターが外れたかのように止められなくなった。
「っふ、ごめん、瑞希、とまんない」
「ふぇっ?あっ、ちょっと、遼一!あっ、やぁっ、」
もう後はお互い意味のある声は発することが出来なかった。
瑞希とそんな事になれたら、ゆっくり開発していこう心に決めてた自分はどこへやら。一度出してはゴムを付け替え、体位を変え色んな角度から瑞希を味わった。
女とスル時は淡白だった自分が、こんなに止められなくなるなんて思ってもいなかった。
瑞希から出る液体が色を無くしてきた頃、ようやく我に返って汗と体液で風呂上がりのようになってる瑞希と目があった。
「りょ、いち………あの、あの俺変じゃなかった?」
「さいっこーに可愛かった。俺は?」
「…カッコよくてずるかった…」
瑞希さん…今更恥ずかしいって布団で顔だけ隠すのやめてよ。もう散々乱れた姿見たのに…。
「瑞希」
ビクッとして、布団から目だけ出して俺を見る愛しい人。
「また、休みの前の日ならしていい?」
またオズオズと布団の中に戻った瑞希は掠れた声を出した。
「いいに決まってるから訊かないで」
返事をしてくれた瑞希を布団ごと抱きしめる。
「遼一好きだよ」
小さな声で呟く瑞希の声が聞こえた。
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