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 発言の、責任。なかなかどうして、痛いところを突いたものだ。  硬化した桃枝の表情こそが、全ての答え。ここにきてようやく、山吹は当初の目的を果たせそうだった。  ──なぜならようやく、桃枝が観念したのだから。 「先に言っておくぞ、山吹。俺は童貞だ」 「うっすらと気付いていましたよ」 「だから、なんだ。……慣れているお前からすると、寝てもつまらない相手かもしれない。満足、させられないかもしれない。それでも、いいのか」 「構いませんよ。童貞を貰っちゃうんですから、責任を持って課長の男を磨きます。任せてください」 「そいつは頼もしいな。頼もしすぎて、涙が出そうだ」  桃枝のことだ。桃枝なりのプランがあり、素晴らしいムードとロケーションで初セックスと臨むつもりだったに違いない。  交際を始めて、一週間。少なくとも桃枝の脳内プランには、こんなにも爆速で体を繋げる予定はなかったはずだ。 「……好きだ、山吹」 「それも気付いて──んっ」  顔が近付き、唇が押し付けられる。なんとも強引で、不器用な口付けだ。  山吹はそのまま、体をベッドに押し倒される。桃枝の手が山吹の肩を押し、次の段階へ進もうと踏ん切りを付けたのだから。  すぐに、桃枝の手は山吹のバスローブに触れる。紐を解き、山吹の下半身を露わにしたのだ。 「あはっ、課長のエッチ。渋っているような態度を見せておきながら、結局はすぐにボクを脱がすんじゃないですか」 「腹は括った。こうした行為への欲求がないと言えば、それは嘘になる。……俺は、嘘が嫌いだからな」 「真面目で、誠実。……素晴らしいお人柄ですね、課長」  褒美にと、今度は山吹からキスを贈る。瞬時に桃枝の頬が赤く染まったが、そこにはあえて触れない。  明らかに、緊張している。それでも桃枝は、手を動かしていた。 「指先、冷たいですね。いつもの手袋がないからですか? それとも……怖気づきました?」 「初めてなんだから、緊張くらい許せ」  捲られた、バスローブ。その下にあるのは、桃枝にもついている男の象徴。  そこを見てもなお、桃枝は逃げなかった。 「年下の恋人が、勇気を出して誘ってくれたんだ。逃げたりするのは、ダサいだろ」  どこまでも、残念な男だ。山吹は内心で、冷ややかに笑う。  山吹がいじらしさからセックスに誘ったと思っているのなら、それは大誤算。山吹には、そういった可愛らしさはない。  それでも、桃枝がそう信じたいのならば。せめて今日くらいは、夢見ることを許そう。  桃枝の手が、山吹のバスローブを完全に脱がそうと動く。瞬時に、山吹は桃枝の手を掴んだ。 「イヤです、課長。上はあまり、脱がさないでください」 「はっ? なんでだよ?」 「えっ。『なんで』って、それは……。課長の、えっち。ボク、おっぱいを見られるのは、恥ずかしいんです……っ」 「おッ、あ、わ、悪かったッ!」  性器が良くて胸は駄目なのか、と。てっきりそう、ツッコミが入るかと思ったのだが。……予想以上の動揺に、山吹はかえって申し訳ない気持ちになりそうだった。  だが、今は違う。今はまだ、桃枝に【ある一点】を見られるわけにはいかない。 「課長、これ。ローション、使ってください」 「あ、あぁ。そう、だな。そう、だよな」  憐れなほど動揺している桃枝の意識を、上半身から下半身へ移す。  この調子で、本当に桃枝の性器は勃つのか。……山吹にとっては甚だ、疑問だった。

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